【SSS】超短レス短編祭り!【飛び入り参加OK!】
最新 最初 🆕
#160 [我輩は匿名である]
帰ろう。


そう思い立って席を立とうとした時、

「三井?残業?」

って後ろから若い男の声が聞こえた。

……ああ、この声はよく知ってる。

同期で入社した男、大野の声だ。





3レスじゃこれが限界ですたww

⏰:08/03/10 01:21 📱:P702iD 🆔:jviBZqKc


#161 [◆vzApYZDoz6]
>>158-160
おkw

参加者&投下が増えてくれて主としては嬉しいが、読む暇がないorz
今から読みます

⏰:08/03/10 03:52 📱:P903i 🆔:tHds.fh2


#162 [お題を全部使って(1/3)◆vzApYZDoz6]
都心部の駅から降りてすぐのところにある、スクランブル交差点。
人でごった返す横断歩道を渡った先に、私の勤めるオフィスがある。
今日も私は電車に揺られた後、その横断歩道を渡って仕事へ行く。
でも、あまり仕事に乗り気がしないのは、私が疲れてるからだろうか。
降り頻る雨。信号待ちの人混みの中で佇む私の体は連日の残業が祟ってひたすら重く、気分はあまり弾まない。
傘を差しながら憂鬱に青信号を待つ私の視線は、自然と地面を向く。

その時に初めて、足下に1匹の猫が居たことに気が付いた。
茶色と黒の駁模様が、コンクリートで固められた地面によく映える。
都会のど真ん中にも野良猫がいるのか、等と薄く考えていると、猫の首輪に目が止まった。
白い首輪。それが首輪ではなく首輪に結ばれた手紙である事に気付くのに、たいした時間は要らなかった。
ちょうど神社の木にくくりつけられてるおみくじのように、両端が結ばれている。
私の視線に気付いたのか、猫は私を一瞥して横断歩道へ踏み出した。

「あっ、まだ赤…」

私の不明瞭な呟きを掻き消すように、周りの人も歩き出す。
どうやら、たった今信号が青に変わったらしい。
人混みを掻き分けて歩く私は、気が付くと視線が数メートル先の猫を向いて、足は歩く猫を追っていた。

⏰:08/03/10 15:36 📱:P903i 🆔:tHds.fh2


#163 [お題を全部使って(2/3)◆vzApYZDoz6]
どれくらい歩いただろうか。
同僚に会社を休む旨を伝えて、ずっと猫の後を追い続けている。
そこまでして私の体を動かすものは、好奇心に他ならない。
あの猫は一体どこへ行くのか。あの手紙を一体誰へ届けるのか。
そんな事を考えながら、時には狭い路地裏を通り抜け、時には電車にただ乗りしようとする猫を追って切符を買い、いつの間にか見知らぬ町に来ていた。

雨は、いつの間にかあがっていた。
周りを田圃や畑に囲まれた、舗装されてないために雨でぬかるんだ田舎道を、猫の後を追い続けて歩いていく。
やがて猫は道なき道へ。雑木林に入り、私の腰あたりまでの高さがある草むらを掻き分け、尚も進んでいく。
疲れは不思議と感じないが、そろそろ陽が傾きかけている。
早くしてくれないと終電に間に合わない、と現実的な事を考えている最中に、とうとう終着点に辿り着いた。

高い草むらを抜け出た先に広がるのは、綺麗な砂浜。丸まって座る駁猫が、地平線まで続く海を眺めている。
時刻はちょうど夕暮れ時。夕日が半分顔を出して、小さく揺れる水面にオレンジの光の道を作っていた。

「ここって…」

その静観な光景は過去に幾度か見たことがある。
遠距離恋愛中だった彼氏とは、お互いの家の中間に位置するこの海岸で会っていた。
肩を並べて静かに夕日を見ているだけで、堪らなく幸せだった。
彼氏は外国に留学して、今では殆んど連絡も取れていない。
たまに電話したりするけれど、どちらかが夜中になったりして手早く会話が途絶えてしまったり。

⏰:08/03/10 15:36 📱:P903i 🆔:tHds.fh2


#164 [お題を全部使って(3/3)◆vzApYZDoz6]
あの頃の懐かしい思い出に浸っていると、いつの間にか隣にいた猫が喉を鳴らした。
そう言えば、首輪にくくりつけられた手紙は一体誰へ宛てたものなのか。
そう思い、私が手紙を読もうと首輪に手を伸ばしてみても猫が嫌がらないあたり、私宛の手紙らしい。
それをこの海岸に連れてきて読ませる人なんて、数少ない。
高揚する気分を抑えて、手紙を首輪から外した。

『元気にしてますか?俺はこっちで元気にやってます。
最近こっちで、その海岸とそっくりな場所を見つけたんだ。たまに足を運んで君を思い出すのが、ささやかな幸せだった。でもそうしてると会いたくなってきちゃったから、1か月後の卒業式の後に、君が今居るであろうその海岸へ行きます。待っててね』

細い綺麗な字で書かれた文。
数年前に外国へ行った彼が、もうすぐ帰ってくる。私は自然と顔を綻ばせていた。

「…追伸?」

『P.S.その駁猫はこっちの海岸に住んでいた野良猫なんだ。すごく頭が良いから、きっと行って帰ってこれるはず。』

「へー、この猫が…ってあれ?」

隣には既に猫はいない。辺りを見回してみても、やっぱりいなかった。
役目を果たし、彼の居る海岸へ帰っていったのだろうか。
もしかして飛行機にもただ乗りしてたのかな、と考えながら、手紙をしまう。
いつの間にか陽は完全に暮れていたので、私は終電を気にして帰った。


それからはあの猫は見ていない。

でも、毎日カレンダーの日付に×印をつけるのが、私のささやかな幸せになっていた。

⏰:08/03/10 15:38 📱:P903i 🆔:tHds.fh2


#165 [◆vzApYZDoz6]
◆vzApYZDoz6さんの作品
往年のライバル(1/1)
>>5
奇怪な電話(2/2)
>>6
>>9
あの頃の思い出(2/2)
>>10-11
ギャグカオスなシュール(1/1)
>>12
賭け(3/3)
>>19-21
ゆびきりげんまん(2/2)
>>23-24
雪(2/2)
>>26-27
親御さん(1/1)
>>37
河上彦斎(3/3)
>>43
>>45-46
雨のち晴れ(2/2)
>>51-52
あだ名で呼んでほしいシュール(2/2)
>>53-54
今から(1/1)
>>63
夢見て、常日頃(2/2)
>>71-72
始まりは白紙から(1/1)
>>73
ありがとう。さようなら(3/3)
>>86-88
Bloody Valentine(1/1)
>>91
トイレ借りたいシュール(2/2)
>>92-93

⏰:08/03/10 16:28 📱:P903i 🆔:tHds.fh2


#166 [◆vzApYZDoz6]
引き続き、◆vzApYZDoz6さんの作品
恋文(1/1)
>>144
お題を全部使って(3/3)
>>162-164

ふむさんの作品
最期の花(1/1)
>>8
世界の真実(3/3)
>>13
>>16-17
天の邪鬼(3/3)
>>25
>>28-29
延長戦(1/1)
>>42
人斬り(1/1)
>>47
空(2/2)
>>55-56
手紙(3/3)
>>110-112

にさんの作品
家族ドライブ(2/2)
>>66-67
選ばれた男(2/2)
>>94-95

⏰:08/03/10 16:29 📱:P903i 🆔:tHds.fh2


#167 [◆vzApYZDoz6]
紫陽花さんの作品
werewolf(2/2)
>>30-31
生きる理由(1/1)
>>41
私の宝物(1/1)
>>50
手紙(1/1)
>>101
卒業(2/2)
>>138-139

向日葵さんの作品
旅立ち(1/1)
>>57
春への想い(3/3)
>>58-60
大好きな赤(2/2)
>>68-70
夕日(2/2)
>>124-125
君と魔法(2/2)
>>153-154

リナさんの作品
死にたがりスティング(2/2)
>>75-76
偽物家族(2/2)
>>117-118

⏰:08/03/10 16:30 📱:P903i 🆔:tHds.fh2


#168 [◆vzApYZDoz6]
蜜月さんの作品
双子の正体(3/3)
>>79-81
電車(3/3)
>>102-104
誘拐事件(2/2)
>>119-120
手紙(3/3)
>>126-128
邪魔モノ(1/1)
>>145

梓さんの作品
真夜中の着信(2/2)
>>14-15
決意(2/2)
>>131-132

朝海さんの作品
初恋(3/3)
>>141-143

きゆんさんの作品
告白(3/3)
>>149-151

天音さんの作品
夕闇と少年(3/3)
>>155-157

⏰:08/03/10 16:30 📱:P903i 🆔:tHds.fh2


#169 [◆vzApYZDoz6]
ボン太さんの作品
ヤッホーい(1/1)
>>89

:LHm6bI72さんの作品
妄女(1/1)
>>122-123

:OM4BGBhoさんの作品
ずっと大好き(2/2)
>>129-130

:jviBZqKcさんの作品
ついてない。(3/3)
>>158-160

なお、タイトルのない作品は文中から抜粋してタイトルを付けました。

⏰:08/03/10 16:32 📱:P903i 🆔:tHds.fh2


#170 [◆vzApYZDoz6]
作品数集計
1レス短編:17
2レス短編:22
3レス短編:15
総作品数:54

現在のお題
@雨
Aあの頃の思い出
B電話
C卒業
D電車
Eささやかな幸せ
F手紙
G都会

まとめ&作品数集計&お題
>>165-170

⏰:08/03/10 16:34 📱:P903i 🆔:tHds.fh2


#171 [◆vzApYZDoz6]
あとふむさんか、もしくは他のまとめ人さん
次からまとめるときは

今までの作品
>>165-169
新たな作品
〜さんの作品
○○○(1/1)
……

って感じにしてくれw
でないとレス数がえらい事にw

⏰:08/03/10 16:42 📱:P903i 🆔:tHds.fh2


#172 [◆vzApYZDoz6]
あっ、
>>129-130『ずっと大好き』
は朝海さんの作品ですね
IDが一緒だ

⏰:08/03/10 17:03 📱:P903i 🆔:tHds.fh2


#173 [ふむ◆s8/1o/v/Vc]
は毎日変わるので匿名さんは匿名さんで一つに総合しちゃった方が良いかも知れませんね

⏰:08/03/10 17:29 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#174 [◆vzApYZDoz6]
>>173
うーん
まぁそのへんは適当にしちゃってくだされw

⏰:08/03/10 17:55 📱:P903i 🆔:tHds.fh2


#175 [朝海]
>>129-130
「ずっと大好き」アタシです
名前居れなくてすいません

⏰:08/03/10 21:12 📱:V803T 🆔:iiQvJMNA


#176 [朝海「笑顔」(3/3)]
アタシ…この生活いつまで続くんだろ…

今日もまたアタシはイジメにあっている

「マジきも〜アハハ(笑)」

「ねぇシカト?聞いてる〜」

そういいながらアタシはトイレに連れてかれホースで水をバシャバシャかけられた

アカリ「やめ…ゲホッ」

水が鼻に入った

「なんか言った?(笑)」

「男にチヤホヤされてっからってマジウザィから〜アカリチャン(笑)」

アカリ「やめてよ」

アタシは女タチをみた

バシッ―‐

「みんじゃねぇよ」

「アハハ〜じゃあねアカリチャン」
アカリ「今日は帰ろ…はぁ」

もぅ死にたい…

アタシはトイレを出た

⏰:08/03/11 02:24 📱:V803T 🆔:2cMrU/Rg


#177 [朝海「笑顔」(2/3)]
屋上でも行くか…

アタシは服を乾かすため屋上に行くことにした

ガチャ―-

アカリ「はぁ…」

アタシはフェンスに寄り掛かり座った

アカリ「ヒック…クッ…ヴゥ…ッ」

アタシは空を見上げた

その時

「オイ」

隣から呼び掛けられた

アカリ「レイ君…」

いつから居たの…

レイ「お前ビショビショだけどどうしたんだよ」

アタシは言いたくなかった
アカリ「…暑いから水浴び(苦笑);ハハ」

レイ「そっか(笑)暑ちぃからいいかもな」

⏰:08/03/11 02:36 📱:V803T 🆔:2cMrU/Rg


#178 [朝海「笑顔」(3/3)]
するとレイは近くにある蛇口に指をつけて水をだしアタシにも自分にもかけた
アカリ「プァッ―-レイ君ちょっ〜ハハ」

レイ「きもちぃ〜」

レイは頭を振って水滴を落とした

アカリ「レイ君ビショビショ(笑)アハハ」

レイ「お前の笑ったトコ初めてみた(笑)その方が可愛いじゃん」

レイ君はアタシの頭をなでた

アカリ「ありがと」

アタシは小さい声でレイに言った
レイ「なんか言った?」

アカリ「ううん」

アタシ―-頑張れるょ

レイ―-ありがとう

アタシはレイの言葉で救われた


レイ「アカリ笑顔が一番だぞ(笑)」

―完―

初めの3/3間違いでした
1/3でした

⏰:08/03/11 02:49 📱:V803T 🆔:2cMrU/Rg


#179 [服屋クエストなシュール(1/2)◆vzApYZDoz6]
脱ヲタが出現した!

脱ヲタはキョロキョロと辺りを見回している!

店員の攻撃!

「いらっしゃいませ!何かお探しですか〜?」

脱ヲタは戸惑いあたふたしている!

店員は殺し文句を唱えた!

「こちらの商品がお客様にすごくお似合いですよ〜!」

脱ヲタは満更でもなさそうにしている!

⏰:08/03/12 03:39 📱:P903i 🆔:6TMeeUAU


#180 [服屋クエストなシュール(2/2)◆vzApYZDoz6]
店員の攻撃!会心の一撃!

「こちら凄く人気で、なんとこれが最後の1品なんですよ〜!」
「じゃあ買います!」
「ありがとうございま〜す♪」
「ではお会計¥398,000になりま〜す!」
「……!!」

効果は抜群だ!

脱ヲタは倒れた!
店員は398,000G手に入れた!

なんと、脱ヲタが起き上がり返品したそうにこちらを見ている!

返品させますか?

   はい
 ニア いいえ

脱ヲタは悲しそうに店を去っていった!

完…?

⏰:08/03/12 03:40 📱:P903i 🆔:6TMeeUAU


#181 [紫陽花]


あげます

そして久しぶりに投稿!!

⏰:08/03/13 20:23 📱:F905i 🆔:☆☆☆


#182 [紫陽花[高嶺の花1/1]]
またあの子だ――…。

毎朝7時きっかりの電車に乗って通学してる子。満員電車の中1人だけ背筋を真っ直ぐに伸ばし、分厚い単語帳と毎朝にらめっこしている。その姿はまるで一輪の百合のようで僕はいつも見とれてしまうんだ。

「なんだなんだ。もしかして一目惚れしちゃったの〜?」

一緒に通学している友達は毎日そうやって僕のことを冷やかすけど、僕は決まってこう答える。
「そんなんじゃない!!ただ…」
ただ…あまりにも綺麗だから、とても儚く見えるから、ずっと見てたいって思っちゃうだけなんだ……。


「でもそれが恋ってもんだろ?」

…――分かってる。
心の中ではこれが恋なんだって叫んでる自分がいることぐらい分かってるんだ。


「しゃべりかけろよ」
「好きだって認めちゃえよ」
「もっと近づけよ」

分かってる。
でも……怖いんだ。
毎日見てたなんて知られたらきっとどん引きされる。いきなり話しかけられたらきっと拒絶される。
怖いんだ。

今のこの心地よい距離を保ちたい。今のこの見つめるだけの存在でいいんだ。


そうやって僕は毎日
百合のような君を
見つめてるだけ――…。

ーーーendーーー

⏰:08/03/13 20:24 📱:F905i 🆔:☆☆☆


#183 [「僕らの未来」向日葵(1/1)]
ビルがひしめく。
最早空が隠れてしまうぐらい。

ビルの森が、僕を囲む。
車の大群が、周りを駆け抜ける。

何もかもが、失われていく時代に僕達は生まれた。
そして育っていく。

無機質な創造物達と共に。

このままでいいのかと、無表情で通り過ぎる人混みに問う。

返事はいつも「どうでもいい。」しか返ってこなかった。

僕達は未来に何を望む?
何を伝える?
何を残す?
何を作る?

希望ある未来は、本当に待っているのだろうか。

ねぇ、君は今、何を思う?

⏰:08/03/13 20:53 📱:SO903i 🆔:BAj4akaA


#184 [◆vzApYZDoz6]
>>181
あげサンクスです!
俺も今から投下

⏰:08/03/13 21:39 📱:P903i 🆔:O1YrPz6M


#185 [変わらぬ気持ち(1/3)◆vzApYZDoz6]
昭和の時代を生きてきた俺にとって、文明の進化には驚かされる。
まさかテレビがあんなに薄くなるとは思っていなかったし、インターネットで世界中の人々と交流できるようになるなんて想像もしていなかった。
今だってそうだ。

「なぁ、これはメールはどうやるんだ?」
「またー?本当にアナログな人間なんだから」
「へいへい。悪かったな、昭和時代の人間で」
「そんな事言って。いい?メールはね……」

最近娘にプレゼントされた、嫁とペアルックの携帯電話に悪戦苦闘している。
老眼には小さな文字は耐えられないし、記憶力の衰えも著しいせいでどのボタンを押せばいいのかもすぐには覚えられない。

(電話も随分変わったな…)

俺が学生時代の頃は、まだ黒電話が主流だった。
数字に合わせてダイヤルをジコジコ回し、掛かってきたらリンリンうるさく鳴る、真っ黒な電話。今では見掛けることは無くなったが。

あの頃は待ち合わせして遅刻しそうになっても、相手にそれを伝える手段がまったく無かった。
今では携帯電話1つあれば問題ない。
文明が進化する、ということは、人間にとっとよい事なのだろうか。

⏰:08/03/13 21:50 📱:P903i 🆔:O1YrPz6M


#186 [変わらぬ気持ち(2/3)◆vzApYZDoz6]
「あっ、ちょっと友達に電話しないと。じゃあお父さん、あとは1人で頑張ってね」
「分かったよ」

娘は白い手に小さな携帯電話を握りしめて、足早に自室へ向かった。
なーにが、『友達』だ。あんなに頬を赤く染めやがって、嘘がバレバレだ。

(まぁでも…俺も若い頃は、好きな人に電話を掛けるのは緊張したなぁ)

学生服に学生帽、坊主頭が主流の時代に、1人文学少年を気取って髪を伸ばしていた。
いつも1人で図書館に篭って、本を読む日々を送っていた。彼女に初めて出会ったのはその頃だ。
いつしか互いに惹かれあい、恋仲になっていった。
相手の父親がなかなかの頑固者で、デートなど大っぴらにできなかった。

(電話を掛けるのにも苦労したなぁ)

いつも父親がいない時間を見計らって電話をしていた。
間違って父親がいる時間にでも掛けようものなら、怒鳴られて切られる事間違いなし。

『あの…山下ですけど』

初めて電話を掛けたとき、唇を震わせながらそう言ったのを、今でもはっきりと憶えている。
黒電話のダイヤルに手を掛けるときは、いつも心臓が強く脈をうってどきどきしていた。
父親が恐いからではなく、好きな人と話せて嬉しくて恥ずかしかったんだろう。

⏰:08/03/13 21:50 📱:P903i 🆔:O1YrPz6M


#187 [変わらぬ気持ち(3/3)◆vzApYZDoz6]
(あ…そうか)

文明の進歩や利便性。そんなものは、多分関係ない。
携帯電話だろうが黒電話だろうが、好きな人に電話を掛けるときは、心臓が大きく跳ねて気分が高揚するもの。
かつて、俺が好きな人に電話する時にそうだったように。
そして今は、俺の娘が同じように頬を染めて電話をしている。
文明がどんなに進化しようと、時代がどんなに移り変わろうと、人の心がそれに左右されることはきっとないんだろう。

「よし。使い方もなんとなく分かったし、初電話でもしてみるか」

あの頃のようなダイヤルではなく、大きくなプッシュホン。
俺は1つずつ、ゆっくりと番号を押していく。電話相手は、俺が学生時代に何度も電話したあの彼女。
受話口の向こうで着信音が鳴り始める。やがて、相手が電話に出た。

「あの…山下ですけど」

「掛けてくるのが遅いわよ。ずっと待ってたんだから」

電話に出たのは、俺の嫁だ。

俺達は歳月や年齢など気にせず、互いに見つめあって頬を染めながら話した。


あの頃の会話を、あの頃の気持ちを、ゆっくりと思い出しながら。

⏰:08/03/13 21:52 📱:P903i 🆔:O1YrPz6M


#188 [[すれ違い(1/3)]蜜月◆oycAM.aIfI]
昨日、嫌なことがあった。
いや、嫌なことなんて毎日ある。
なぜなら、僕はいじめられているから。
良いことなんて、ここ数年あったことがない。
 
でも、昨日は特別に嫌なことがあった。
帰り道にいつも通り、僕の好きなひとみちゃんの後をつけていたら、彼女は他校の男子と待ち合わせしていた。
僕は、ひとみちゃんと付き合えるなんて勘違いするほど馬鹿じゃないから、彼女が他の男と待ち合わせしてデートするのは仕方ない。
僕にはどうしようもないことだ。
 
しばらくひとみちゃんと男の後をつけて、日が暮れだした頃、二人は公園に入っていった。
ベンチに座って楽しそうに話す二人を、僕は隠れて見ていた。
男がうらやましかった。あれが僕だったら……
そう思っていたら、男がひとみちゃんにキスをした。
僕の大好きなひとみちゃんに!
ひとみちゃんにキスの経験が無いのを知っていた僕は、彼女が嫌がる、助けなきゃ、とその場に飛び出そうとした。
が、僕の考えとは逆に、彼女は自分から舌を入れたり、男の背中を撫で回したり……。
なんて淫乱なんだ!
騙された……あんな女だったなんて!
 
僕は彼女に幻滅した。
そして今日、ここに来た。
僕はいつも、嫌なことがあると近くの山に登る。
山と言っても、頂上まで30分もかからない小さな山だ。
僕は、頂上に続く獣道を慣れた足取りで歩いていた。
10分ほど歩くと、茂みの中に見覚えのあるものを発見した。

⏰:08/03/15 01:47 📱:SH903i 🆔:8XG7PsGk


#189 [[すれ違い(2/3)]蜜月◆oycAM.aIfI]
あの淫乱女、ひとみがいつも首に巻いているマフラーだ。
なぜこんなところに? 誰か他の人の……?
いや、毎日後をつけている僕が見間違うはずはない。
僕は地面に落ちていたマフラーを拾って匂いを嗅いでみた。
間違いない、何日か前に嗅いだ体操服と同じ匂いだ。
ひとみが近くにいるんだと思い、僕は茂みの奥へと入り込んでいった。
5分ほど茂みの中を突き進んだ僕は、再びひとみの落とし物を見つけた。彼女が肌身離さず持っている白い携帯電話だ。
僕は素早く拾いあげると、携帯電話のボタンを操作する。
この作業は、僕が夢にまで見ていたものだった。今まで一度もチャンスが無かったのだが、僕の気持ちが変化してからこんなことがあるなんて、皮肉なものだ。
次々と画面に表れるのは、ひとみと友達のツーショット写真や、男と交わしたメール……だが、あるメール画面が表示された時、僕の手は止まった。
 
『××山のコテージで待ってる』
 
送信メールの中で見つけたものだが、宛先の名前には見覚えがない。どうせあの他校生か誰かだろう。
この山の頂上の少し手前には、なぜか一つだけポツリと建てられた小さなコテージがある。そこで彼女が誰かを待っているようだ。
僕は迷わずその場所に向かった。
 
茂みを掻き分けてどのくらい進んだだろうか、コテージが見えてきた。だが、周囲に人影らしきものはない。
あの中で、あいつはまた淫らなことをしているんじゃないだろうか。見たくない。はずなのに、僕の体は意識を無視して行動していた。

⏰:08/03/15 02:02 📱:SH903i 🆔:8XG7PsGk


#190 [[すれ違い(3/3)]蜜月◆oycAM.aIfI]
僕は建物の裏側から、周囲の様子を伺いながら慎重に近づいた。そしてコテージの壁にはりついて、窓からこっそりと内部を覗く。
緊張しながらも、僕はひとみの姿を探した。
だが、ひとみどころか中には誰の姿も無かった。
ほっとしたのと同時に、期待を裏切られたような気分だった。もう帰った後だったのだろうか。
僕は、表に回ってコテージのドアを開けた。やはり中には誰もいない。
だが、テーブルの上に置かれた赤い布が僕の目に映った。あれは……制服のスカーフだ。
近づこうとしてコテージの中に一歩足を踏み入れた瞬間、頭に衝撃が走って僕は崩れ落ちた。
痛みに顔を歪めている僕の耳に、男の声が聞こえた。
「こいつ、やっちゃっていいの?」
「うん。いいよ」
それに答えたのは……間違いない、ひとみだ!
どういうことだ? なぜひとみが僕を?
「ずっと付きまとわれててさ。キモいんだよね」
僕はもうお前に付きまとうつもりは無い!
だが、男の足が倒れている僕のみぞおちを強打したため、声にはならなかった。
痛みをこらえて目を開けると、視線の先には嫌悪感に満ちたひとみの顔があった。
視界の端を棒のようなものが通りすぎると、すぐに頭に痛みを感じた。
何かが弾けるような感覚の後、僕は意識を失った。
現実を遮断する直前に聞いたのは、ひとみの声だった。
 
「ストーカーだったなんて、幻滅した……
 
好きだったのに」

⏰:08/03/15 02:06 📱:SH903i 🆔:8XG7PsGk


#191 [あなーる]
>>185-187
感動した

⏰:08/03/15 03:44 📱:D903i 🆔:fT7xAXGE


#192 [◆vzApYZDoz6]
>>191
どうもですw

⏰:08/03/15 09:46 📱:P903i 🆔:bj6p3a.g


#193 [ピスタチオのお誘い(1/2)◆vzApYZDoz6]
普段なら週末にしか足を運ばないショットバーに、平日に顔を出した。
特に何かある訳じゃない、ただのお盆休みの振替休日だ。営業マンにお盆休みなんて存在しない。

氷の入ったグラスを回していると、1人の女が店に入ってきた。
24、5歳ぐらいだろうか。薄化粧だが端麗な顔立ちをしている。
女は殆んど迷うことなく俺の横にやってきた。

「隣、座ってもいいかしら?」
「構わないよ。…席は他にも空いてるみたいだけどね」
「いつもの席に先客がいるみたいで」
「そう。あ、ミックスナッツ良かったらどうぞ」
「ありがとう、戴くわ」

女はジンバックを注文し、ミックスナッツの中からピスタチオを探して手に取った。

「ピスタチオが好きなのか?」
「ええ、とても。2番目にアーモンドかしらね」
「知ってるかい?イタリア人はピスタチオを殻ごと食べるんだよ」
「知ってるわ。私の父も殻ごと食べるし、もちろん私もそう」

そう言うと、女はピスタチオを殻ごとボリボリと食べ始めた。

「そう言うあなたは?」
「…殻ごと食べる日本人が他にもいたとは驚いたよ。どうやらこの店には2人のイタリアンがいるようだ」

俺は無くなったマティーニのおかわりを頼んで、ピスタチオを殻ごと食べた。
当たり前だがとても硬い。だが無理矢理飲み込んだ。

⏰:08/03/15 14:15 📱:P903i 🆔:bj6p3a.g


#194 [ピスタチオのお誘い(2/2)◆vzApYZDoz6]
「…ふふっ」

その様子を見ていた女が小さく笑い、口から殻だけを丁寧に吐き出した。

「チンパンジーだってバナナの皮を剥くわよ」
「なぜ嘘だと分かったんだ?」
「だってあなた、灰皿に殻が残ってるじゃない」
「騙されたな。いや、騙そうとしたのは俺が先か」
「指定席を取られちゃったからね、悪く思わないで」
「まぁそれはそうと、よく口の中で殻を開けられるな?」
「得意なのよ、そういうの。試してみる?」
「…ふっ、いいだろう。次はちゃんと殻を剥くことにするよ」
「あら、上手に言うわね。でも私の殻は硬くてよ」

俺と女は、チェックを済まして店を後にした。

今夜は退屈しなさそうだ。

⏰:08/03/15 14:16 📱:P903i 🆔:bj6p3a.g


#195 [おかしな本屋さん(1/1)◆vzApYZDoz6]
街角の薄暗い道を歩いていると、雑居ビルの1階に見るからに怪しい小汚い店を発見した。
こんな所に店なんかあったっけ、と考えながら、俺はいつの間にか好奇心に駆られて扉に手を掛けていた。
色褪せた木でできた両開きの古い扉を、蝶番が軋む耳障りな音と共に開く。
むせかえりそうになる埃に口と鼻を抑えながら、店内を見渡した。
視界に入るのは、棚にぎゅうぎゅうに詰め込まれた大量の本。それでも棚に入りきらず、傍の床に積み重ねられた本の山。
すし詰め状態にされた圧倒的な量の本に、口をだらしなく開けたまま固まってしまった。

「何か、お探しかな?」

急に後ろから声を掛けられ驚いて振り向くと、男が扉の前に立っていた。
見た感じでは初老の、店主と思しき男。穏やかに目を細めてこちらを見ていた。

「普通の本をお探しなら、残念だけどここには存在しない」

「ここにある本は、奇妙・奇怪・超常・摩訶・怪奇…不思議な本しかございません」

言いながら俺の横を通り過ぎ、狭い棚の間にある梯子を昇って、1冊の本を手に取った。

「この本を、あなたに」

渡されたその本を咄嗟に受け取る。
かなり古い本らしく、受け取った瞬間に埃が舞った。

「では、またのご来店を」



気が付くと、本屋は無くなっていた。
ビルはある。だが、中の本屋がごっそり消えていた。
元から存在しなかったのか、という考えが脳裏をよぎる。
だがそれでは服に付いた大量の埃と、右手に持っている1冊の本の説明がつかない。


とりあえず、自分の名前がタイトルになっているこの本をどうするべきか。

⏰:08/03/15 14:54 📱:P903i 🆔:bj6p3a.g


#196 [◆vzApYZDoz6]
上げときまーす

>>165-169に>>164までの作品まとめ
>>170に作品数集計とお題まとめ
お題は使わなくてもおkよん

俺はそろそろネタが思い付かないんで、みんなもっとガッツリ参加しとくれw

名無しさんや、新たな書き手さんの参戦もまだまだ大歓迎!
読み手さんも参戦おk!w
つうか誰だって参戦おkですwww


ふむさん、テスト終わったんでしょ?待ってますよw

⏰:08/03/15 18:56 📱:P903i 🆔:bj6p3a.g


#197 [ふむ◆s8/1o/v/Vc]
何ですかそれはw
何で私だけ強制参加じみた…
私には拒否権というものが存在しないのでしょうか?w
わかりましたよ、SSS考えておきますw

⏰:08/03/15 19:04 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#198 [朝海『ageha』(1/3)]
アタシは超が着く程の地味っ子;
化粧もしない、髪も真っ黒、スカート膝下―-と、まぁ昭和の香りプンプンの高校2年生の心歌(ミカ)です

学校に着くと
「心歌〜おはぁ」
心歌「おはょ真姫(マキ)」
真姫はアタシとは真逆;派手ですごく今風
何故一緒に居るかはアタシが真姫を助けたから、いろんな意味で―-
真姫「心歌〜彼氏にフラレタァ;」
心歌「またぁ;なんで?」
これで何度目だろぅ;
真姫がフられてるのは〜
真姫「二股バレた」
なんじゃそりぁ;
心歌「二股はダメだょ;」
真姫「だって男は必要でしょ?」

シラっと真姫は言ってのけた
真姫「心歌も彼氏つくりなぁ」
心歌「アタシには無理だょブスだし」

真姫「それはこの格好と美意識が足りないからでしょ?女は磨けば磨く程輝くもんなの!」

⏰:08/03/16 14:08 📱:V803T 🆔:pvMNgyPI


#199 [朝海『ageha』(2/3)]
真姫はビシッと言った
心歌「は…はぃ;」
真姫「今どきスッピンは居ないよ」
アタシタチは教室に着いた
心歌「じゃあどうすれば…」
真姫「ここ座って」
真姫は自分の席に心歌を座らせた
真姫「この前髪は有り得ない;眼鏡も外すょ」
アタシの前髪は目が隠れている;プラス眼鏡
すると真姫はハサミを取り出した
心歌「ちょッ!ま…」
すると
「おぃ真姫何やってんだょ;」
男の人が来たけどアタシはぼやけて見えなぃ
真姫「ユージじゃんはょ」
ユージ「おぅ-ってか心歌…だっけたしか;」
地味過ぎてアタシ存在ないのね;同じクラスなのに…
真姫「そッ!心歌切るよ」
真姫はチョキ2切っていった
真姫「わぁアンタホント心歌?」
真姫は驚いていた
ユージ「…マジ」
心歌「変…でしょブスでしょ」
アタシは顔を隠した

⏰:08/03/16 14:21 📱:V803T 🆔:pvMNgyPI


#200 [朝海『ageha』(3/3)]
真姫「むしろ可愛ぃ…化粧もするょ」
真姫は前髪をピンで止めて化粧をし始めた
真姫「…」
ユージ「惚れた;」
心歌「えッ!」
アタシはユージ君をマジマジ見た
ユージ「あんま見んな///」
心歌「ごめん;」
真姫「なんで今まで気付かなかったの〜!こんな可愛かったのに心歌のバカ」
心歌「ブスだょ;アタシ」
アタシは今だに自分の顔を見ていない;
真姫「はぃ見て」
真姫は鏡を見せた
えッ!これ…アタシ;
えぇ〜;
アタシは発見した
女は磨けば磨く程美しくなる
ブスは輝くんだ

それからアタシは真姫に化粧を教えてもらいコンタクトにして格好も変えた
一番嬉しかったのは彼氏が出来た事///
ユージです
アタシはすごく幸せです
真姫ありがとう
ユージ「心歌〜帰んぞ」
心歌「まってぇ」

〜完〜

⏰:08/03/16 14:33 📱:V803T 🆔:pvMNgyPI


★コメント★

←次 | 前→
↩ トピック
msgβ
💬
🔍 ↔ 📝
C-BoX E194.194