漆黒の夜に君と。[BL]
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#751 [ちか]
「もしもの話だけどさ…」

「なんだ?」

雑な返事。

「ほんとにもしもだよ?」

そう。これはあくまで“もしも”の話。

「だからなんだよ。」

なかなか本題に入ろうとしない俺に先生の返事も乱暴になる。

⏰:09/03/22 23:18 📱:P906i 🆔:DXTf0Jxg


#752 [ちか]
「もし…先生の前に、どう考えても先生より彼女に相応しい男が現れたとしたら…」

「なんだソレ。ヤな話だな。」

先生はふっと小さく笑ってそう言った。

「まぁまぁ。それで、その男が先生の彼女を好きだって言い出したら…どうする?」

そう、これは今の俺の現状に似せた例え。

先生ならどうするかなって。

⏰:09/03/22 23:27 📱:P906i 🆔:DXTf0Jxg


#753 [ちか]
俺が質問を投げ掛けたところで先生はやっとプリントから目を離し、俺の方へその目を移した。


「どうするって‥別にどうもしないだろ。」

「え?」

どんな答えが返ってくるだろうと半ば緊張していた俺に返された答えは、予想以上にあっさりしたモノだった。

その単純な答えに俺は思わず間の抜けた声をもらす。

⏰:09/03/23 12:43 📱:P906i 🆔:O6X.h/Hk


#754 [ちか]
「‥なんで?落ち込んだり、焦ったり‥しないんですか?」

「そんなことしても疲れるだけだろ。」

その口振りに余裕さが窺える。
その余裕さゆえに俺の頭はさらに疑問で埋まってゆき、小首を傾げた。

そんな俺を見て先生はさらに言葉を続けた。

⏰:09/03/23 12:49 📱:P906i 🆔:O6X.h/Hk


#755 [ちか]
「あのなぁ、その男が彼女に似合うか似合わないかなんて俺が決めることでも他人が決めることでもないんだよ。
彼女が俺を選んでくれてるうちは、彼女にとっては俺が一番相応しいってことだろ?
ならそれでいいじゃねーか。
誰が出てこようが、本人の気持ちが俺に向いてるなら焦る必要も、負い目感じる必要もない。
考えるだけ無駄だ無駄。
俺、疲れることはしない主義だからな。」

そう言って先生は柔らかい笑みを見せた。

⏰:09/03/23 17:26 📱:P906i 🆔:O6X.h/Hk


#756 [ちか]
『似合うか似合わないかなんて俺が決めることでも他人が決めることでもない』

『俺を選んでくれてるうちは、彼女にとっては俺が一番相応しいってこと』

『誰が出てこようが、本人の気持ちが俺に向いてるなら焦る必要も、負い目感じる必要もない』‥――

言葉の一つ一つが頭に染み込んでくる。

そうだ。恭弥はいつだって俺を見ててくれてる。
誰が出てこようがそれは変わらなかった。
悩む必要なんて無かったんだ、初めから。

⏰:09/03/23 17:36 📱:P906i 🆔:O6X.h/Hk


#757 [ちか]
胸の締め付けがスッと解けていくのが分かった。


「先生、たまには良いこと言うんですね。」

「“たまには”ってのは余計だ。」

そう言って先生はまた俺にデコピンを食らわせようとする。
それを片手で掴む俺。

「同じ手はくらいません」

得意気にニッと笑ってみせる。

⏰:09/03/23 17:46 📱:P906i 🆔:O6X.h/Hk


#758 [ちか]
手を離そうとしない俺に先生はムッとしたご様子。
しかしその顔はすぐに笑顔へと変わっていく。
ニヤリと笑うその顔は鬼と言うより悪魔だ。

「て言うか、なんだお前そう言う恋愛してんの?
ふーん。へえ〜。」

「べ、別にそれは関係な‥ッ///い゙って!!」

空いていた片手が否定しようとする俺に命中した

「甘いな日下。
手は二つあるんだよ。」

にっこり微笑む先生。

やられた‥‥。

⏰:09/03/23 18:00 📱:P906i 🆔:O6X.h/Hk


#759 [knj]
メチャクチャいいですv(*^^*)/
感動しました(T_T)
続き頑張って下さい\(*^^*)/
応援してます(^∇^o)(o^∇^)

⏰:09/03/23 19:49 📱:W61PT 🆔:134pqGpo


#760 [ちか]
>>759
└→knjさま*

ありがとうございます!!
嬉しくて涙が(´;ω;`)
感動してもらえて、書いてる側としてもほんま嬉しい限りです*´∀`*

これからも楽しんでもらえるように一生懸命頑張りますっ★

⏰:09/03/23 21:50 📱:P906i 🆔:O6X.h/Hk


#761 [ちか]
>>758

「むかつく…。」

手加減してるつもりかも知れないけど威力はある
赤くなるおでこを擦りながら涙目で先生を睨んだ

「ラッキーだと思え。
俺のデコピンを受けると頭良くなるんだから。」

「じゃあ俺はとっくに天才少年ですよ。」

「それもそうだな。」

そんな他愛のない冗談にお互い笑みを溢しながら、放課後の居残り補習は進んでいった。

⏰:09/03/23 22:03 📱:P906i 🆔:O6X.h/Hk


#762 [ちか]
「じゃ、今日はここまでにするか。」

窓の外はいつの間にか青かった空は夕焼けで綺麗なオレンジに染まっていた。

「今日はってことは明日もか〜。」

「嫌だったらさっさと賢くなれ。」

そんな無理言われても…

「でもちょっと出来るようになりましたよ、俺。」

「“ちょっと”な。」

皮肉混じりの言葉が頭にくるけど先生らしいよな

⏰:09/03/24 00:11 📱:P906i 🆔:niXsekkY


#763 [ちか]
俺は教科書やらプリントを鞄の中に詰め込んで立ち上がった。

「気をつけて帰れよー。」

「はいはーい。」

そんな淡白な会話をして教室をあとにする。

階段を降りて玄関まで行くと、校門の方に白く長い車が見えた。

⏰:09/03/24 17:59 📱:P906i 🆔:niXsekkY


#764 [ちか]
「目立つから校門の前には来ないでって言ったのに…。」

誰も居ない玄関でため息混じりの独り言を呟く俺

しかし珍しいな。
いつも車は黒なのに…

白い車を見るのは今日が初めてだった。

⏰:09/03/24 18:04 📱:P906i 🆔:niXsekkY


#765 [ちか]
しかし、まぁそんな日もあるんだろうと、あまり深く考えず俺は校門へと足を運んだ。


車の前まで来てみたものの、やっぱり何か違和感がある‥

腰を曲げて窓に顔を近づけると、閉まっていた窓が静かに開いた。

⏰:09/03/24 21:51 📱:P906i 🆔:niXsekkY


#766 [ちか]
黒くて外からは見えないよう加工された窓がゆっくりと降りていく。


それを辿るように目で追っていく俺。

だんだんと露になるその見覚えのある顔。


「神楽さん?!?!」


ピタリと止まった窓の中から顔を見せたのはまさしく神楽さんだった。

⏰:09/03/25 00:21 📱:P906i 🆔:sBuzbL7s


#767 [ちか]
「昨日はお世話になりました。」

神楽さんはにっこり笑ってそう言うと、軽く頭を下げた。

「や、お世話なんて全然!!
あの‥体調はもう大丈夫なんですか?」

「はい、もう大丈夫です。ご心配おかけしました。
恭くんが連絡したのか今朝実家に連れ戻されましたが‥」

「あ、じゃあこの車は‥」

「うちのものです。」

だから白いのか。

⏰:09/03/25 12:14 📱:P906i 🆔:sBuzbL7s


#768 [ちか]
俺は一人納得したように、頭を縦に小さく振った

「あ、恭弥ならもう帰ってますよ?」

「いえ、今日は冥さんとお話したくて参りましたので。」

「俺に‥?」

笑顔でそう言う神楽さんを見て、俺は自分を指差しながら言った。

普段勘が冴えない俺だけど、なぜかこの時は身の危険を感じた。

⏰:09/03/25 13:10 📱:P906i 🆔:sBuzbL7s


#769 [ちか]
「はい。
立ち話もなんですので、どうぞ中へ。」

神楽さんがそう言うや否や、運転手と思われる人が降りてきて、ドアを開けた。

「や、でも‥」

何か嫌な予感がする。

「遠慮なさらずに。」

結局俺は神楽さんの押しに負けて車内へと入った

⏰:09/03/25 14:16 📱:P906i 🆔:sBuzbL7s


#770 [ちか]
そわそわして落ち着かない俺に、妙に静かな神楽さん。
そして、ゆっくりと走り出した車。

2人の間に流れる空気はなんとも言えない。


「あ、あの…話って‥」

このまま黙っているワケにもいかず、どうせなら早く終わらせてしまおうと俺はついに口を開いた。


どうして俺はこの時思い出さなかったのだろう。
優里の言葉を。

⏰:09/03/25 16:02 📱:P906i 🆔:sBuzbL7s


#771 [ちか]
俺が話を切り出すと、神楽さんも口を開いた。

「あ、そうでしたね。
話と言うのは昨日のことでして…」


“昨日のこと”‥――
神楽さんからその単語を聞いた瞬間、鼓動が急に早く脈打ちだした。

それがバレないように顔を強張らせる俺。

⏰:09/03/25 21:45 📱:P906i 🆔:sBuzbL7s


#772 [ちか]
次にどんな言葉が来るか
どんな言葉が放たれるのか。

神楽さんが言葉の後に長く間を空けるもんだから、俺の想像はいろんな方向へと巡らされた。

さぁ、今次の言葉が放たれようとしている。
なんて言われるか。
鼓動はドクドクと胸を打つ。

神楽さんはゆっくりと口を開いた。

⏰:09/03/25 23:21 📱:P906i 🆔:sBuzbL7s


#773 [かなほ]
あげwww

続き気になる

⏰:09/03/26 11:44 📱:SH02A 🆔:tVlc8YuM


#774 [ちか]
>>773
└→かなほさま*
あげてくれてありがとうございます
中途半端なところで切ってしまいすいません><
今から更新します*

⏰:09/03/26 12:01 📱:P906i 🆔:T1.t4GZE


#775 [ちか]
>>772

「正直、恭くんの口からあんな言葉を聞く日が来るなんて思っていませんでした。」

眉を寄せ、苦く笑う神楽さん。

その言葉の意味が良く分からなくて、俺は首を傾げた。
そんな俺を見て神楽さんはふふっと笑うと、話を続けた。

⏰:09/03/26 12:11 📱:P906i 🆔:T1.t4GZE


#776 [ちか]
「恭くんと私は親同士が友人でして、本当に幼い頃から顔見知りだったんですが、その頃から恭くんにはなんとも言えないオーラのようなものがあって、私自身もその頃は近寄りがたい存在だと思っていました。」

「へ、へえ‥」

オーラ‥ねぇ。
なんか想像つくかも。

⏰:09/03/26 12:21 📱:P906i 🆔:T1.t4GZE


#777 [ちか]
「そもそも、私と恭くんが初めて言葉を交わしたのは、うちの父が主催したその年初等部に入学する子供を持つ友人と子供同士を祝うのパーティーの席でのことでした。」


「は、はあ‥」


なんか話それてきてる気が‥

⏰:09/03/26 12:29 📱:P906i 🆔:T1.t4GZE


#778 [ちか]
――‥11年前
     (語り:神楽)
そのパーティーで私は主催者の娘と言うこともあり皆さんの前でピアノを演奏することになったんですが…

なんせ騒ぎ事が大好きな父ですから、いらした方も多く、まだ6つだった私は直前になって逃げ出してしまったんです。

パーティー会場から出た私は闇雲に走って着いた場所に小さく踞(ウズクマ)り、泣いていました。

⏰:09/03/26 12:41 📱:P906i 🆔:T1.t4GZE


#779 [ちか]
『神楽お嬢様?!』
『神楽お嬢様ーっ!!』

狭い部屋でしたし、私自身隅っこで小さくなって居たものですから、私を探しに来た人達も全く私も見つける気配はありませんでした。

それからだんだんと騒がしさがおさまってきた頃、ドアが開く音がしました。

⏰:09/03/26 19:08 📱:P906i 🆔:T1.t4GZE


#780 [ちか]
靴音がして、誰かが部屋に入ってきたようでした

私は、怒られるのが怖くてただ小さく震えるだけ‥

やがて私の前でその靴音はピタリと止みました。

『かぐらちゃん?』

ふいに名前を呼ばれ、私は咄嗟に顔をあげました。

『やっぱりかぐらちゃんだ。』

そこに立っていたのが恭くんだったのです。

⏰:09/03/26 19:15 📱:P906i 🆔:T1.t4GZE


#781 [ちか]
涙で歪んだ景色にぼんやりと恭くんの顔が浮かびました。

『なんで泣いてるの?』

恭くんはそう言って私の瞳に溜まった涙を拭ってくれました。

私は皆さんの前ピアノを弾くのに緊張して逃げ出してきたことを打ち明けました。
涙で言葉に詰まる私の話を、恭くんはただ静かに聞いてくれました。

⏰:09/03/26 22:25 📱:P906i 🆔:T1.t4GZE


#782 [ちか]
『でも、かぐらちゃんが居なくなってみんな心配してたよ?』

恭くんの言う“心配”の2文字が私の幼心を罪悪感でいっぱいにしましたが、それでも私は皆さんの前に立つのが怖くて【いや、いや】と言わんばかりに首を横に振りました。

ですが、その時です。

『ん〜、じゃあぼくも一緒に弾いてあげる。』

『え‥?』

思ってもみなかった発言に私は潤んだ瞳を恭くんに向けました。

⏰:09/03/26 22:50 📱:P906i 🆔:T1.t4GZE


#783 [ちか]
『2人なら大丈夫でしょ?』

私は小さくコクンと頷きました。

『じゃあ行こ。』

そう言って笑顔で手を差し伸べられた時、私は恋に落ちたのです。

あの時の笑顔はもう可愛いらしくて可愛いらしくて‥

⏰:09/03/26 22:57 📱:P906i 🆔:T1.t4GZE


#784 [ちか]
「そうだったんですかぁ‥」

ほんのりと頬を紅くする神楽さん。
なんか自分の世界って感じ。
そんな神楽さんに適当な相槌を打つ俺。
内心は俺の知らない恭弥を知ってる神楽さんが羨ましくて、少し妬いていた。

でも、やっぱり話それてない?

⏰:09/03/26 23:01 📱:P906i 🆔:T1.t4GZE


#785 [ちか]
「あ、すいません思い出していたらつい長々と…。話の続きを‥えーっと、あ!そうです、そうです!その頃から私はずっと恭くんだけを見てきました。
外見はもちろん、内面もお優しい恭くんは、それはもう俗に言う"モテモテ"でした。」

俺は相槌を打ち続けるものの、神楽さんに対する恭弥の態度を思い出しながら納得のいかないような顔をしていた。

だって内面もお優しいってさぁ…ねぇ?

⏰:09/03/26 23:09 📱:P906i 🆔:T1.t4GZE


#786 [ちか]
そんな俺をよそに、マシンガン的なテンポで話を続ける神楽さん。

が、モテモテでしたと言ったあと一息ついてテンポは緩やかになった。

「ですが、恭くんはどんな美人が言い寄って来ようとも、見向きもしませんでした。…今まで一度も。
ですから、私もこの思いが受け入れて貰えなくても別に良かったのです。
恭くんに“特定の方”が現れなければ…それで良かったのです…。」

だんだんと悲しそうな顔をする神楽さんに俺は多少の罪悪感を覚えた。

⏰:09/03/26 23:56 📱:P906i 🆔:T1.t4GZE


#787 [ちか]
「ですが、昨日‥‥。
あんなに他人(ヒト)を愛しそうに見つめる恭くんは初めて見ました…。」

(それが俺なのか…)

俺はしゅんとする神楽さんをよそに内心すごく嬉しかった。
本当に恭弥は俺を好きで居てくれてるんだと確認出来て、嬉しかった。

ニヤけてしまいそうな顔がバレないように顔に力を入れていたその時。

神楽さんの俯いていた顔が勢いよくこちらへと向いた。

⏰:09/03/27 00:01 📱:P906i 🆔:Kttm89gw


#788 [ちか]
「冥さんっ!!!!!」

「へ、はぃッ?!?!」

俺を見つめる瞳に、もはやおっとりとした雰囲気の神楽さんは居なかった
その真剣な眼差しに俺は思わず怯(ヒル)んだ。
声まで上擦ってしまう始末。情けないよなぁ…。

なんてことを考えているうちに、神楽さんはずいずいと俺に近づいていた。

そしてこう言ったのだ。

⏰:09/03/27 00:07 📱:P906i 🆔:Kttm89gw


#789 [ちか]
「私と勝負してください!!」

勢いよく放たれた言葉に俺の頭は一時フリーズした。

―…しょ、しょ、
「勝負ッッ?!?!」

神楽さんの目は真剣そのもの。

「じょ、冗談じゃないです!!」

女の子(破壊力は最強だけど)と勝負なんてそんな…っ

「もちろんです!!私も冗談で申してる訳ではありません!!」

いや、そう言う意味じゃなくて!!!

⏰:09/03/27 00:24 📱:P906i 🆔:Kttm89gw


#790 [ちか]
だって、性別の壁ってもんがあるだろ?!

殴り合うようなことは男として絶対手あげられないし!!

逆に花嫁対決みたいな、料理とか掃除とか、そりゃあずっと一人暮らしだったから普通の男よりは全然出来るけど!!

こんな良いとこのお嬢様に敵うような腕前はない

どっちにしろ、答えは

「無理です!!!!」

に決まってる。

⏰:09/03/27 00:30 📱:P906i 🆔:Kttm89gw


#791 [ちか]
驚いて目を丸くする俺を見て、神楽さんはその真剣な眼差しで言う。

「ご心配は要りません。
どちらにも不利が無いよう勝負内容は考えさせて頂きましたから。
もう準備は全て整っております。
後は、この車が目的地に着くだけです!」

「えぇッ?!?!」

そう言えば、この車どこ向かってんの?!?!

⏰:09/03/27 00:35 📱:P906i 🆔:Kttm89gw


#792 [ちか]
気づいた時にはもう遅かった。
あの時、神楽さんの車に乗った瞬間からこの人の計画は始まっていたのだ

徐々にスピードを上げていく車。

「後は私にお任せください。」

そう言ってハンカチのような物を俺に当てた。

「っな!!!任せ‥ら‥れる‥わけ‥‥―――」

そこで俺の意識は途切れた。
最後に頭の中で浮かんだのはあの時の優里の、
『神楽姉には気を付けろ』と言う言葉だった‥‥―――

⏰:09/03/27 00:43 📱:P906i 🆔:Kttm89gw


#793 [ちか]
――――‥‥

「………ん……?」

次に意識が戻った時、俺の視界には見慣れない景色が広がっていた。

「た…たみ?」

鼻の奥まで薫ってくる独特の匂い。
むくりと起き上がり、辺りを見渡してみる。
和風な装飾品が飾られた広い部屋。

何が何だか分からず、ぽけっとしているとやがて襖が静かに開いた。

⏰:09/03/27 14:06 📱:P906i 🆔:Kttm89gw


#794 [ちか]
「目が覚めたのですね。」

襖からにこにこした笑顔を向け、こっちに歩いてくるのは神楽さんだった

「あ、あのここは‥‥??」

「私が用意した場所ですのでご安心を。」

神楽さんはキョロキョロと周りを見る俺に微笑みかけた。

ご安心をって‥‥安心出来るわけないじゃん!!!!
俺、これからどうなるわけ?!?!

不安で仕方ない俺は近寄ってくる神楽さんから一歩、また一歩と座ったまま退いていく。

⏰:09/03/27 14:16 📱:P906i 🆔:Kttm89gw


#795 [ちか]
「警戒しないでください。少し手荒な真似だったかも知れませんが…」

困ったように笑う神楽さんに俺は疑いの目を向ける。

だって警戒しない方がおかしいだろ?!
ある意味誘拐だ、こんなの!!!

そんな事を考えながら口をパクパクさせていると、再び襖が開いた。

⏰:09/03/27 14:23 📱:P906i 🆔:Kttm89gw


#796 [ちか]
開いた襖から顔を覗かせたのは黒いスーツを着た強面の男の人。

「お嬢、「その呼び方やめなさいと言ってるでしょう。」

一瞬柔らかい口調が刺々しくなる。

俺が推測するに、たぶんお父さん絡みの…つまりヤクザ関係の人だと思う

⏰:09/03/27 14:30 📱:P906i 🆔:Kttm89gw


#797 [ちか]
冷ややかな口調に黒いスーツの人は頭を少し下げると、
「すいません…。」
とだけ呟いた。

それを見て神楽さんは小さくため息をつくと、もとの柔らかい口調で話し始めた。

「それで、何か御用ですか?」

「はい。もう少しで恭弥様がご到着するようです。」

…え?

⏰:09/03/27 14:36 📱:P906i 🆔:Kttm89gw


#798 [ちか]
「そうですか。ご苦労様です。」

「いえ。それではまた後程。」
それだけ言うと襖はまた静かに閉まった。

‥‥‥て言うか、
「恭弥も来るんですか?!」

俺は神楽さんを見上げながら声を張り上げた。

「もちろんです。
最終的にこの勝負の勝敗を決めるのは恭くんですから。」

当たり前のような顔でそんな事を言う神楽さんを目の前に俺はますます混乱した。

⏰:09/03/27 14:43 📱:P906i 🆔:Kttm89gw


#799 [ちか]
「勝負、勝負って‥‥一体何するんですか?!?!」

今の状況に俺の頭は全くついていかず、半ば半泣きの状態だった。

「あぁ、勝負内容を申してませんでしたね。私とした事が‥すいません。
ですが、冥さんは何もしなくて良いのです。」

「へ‥?」

「ここはあるビルの最上階です。恭くんが着き次第、勝負は始まります。
私も恭くんも、ここからモニターを見てるだけでいいんです。簡単でしょう?」

⏰:09/03/27 14:53 📱:P906i 🆔:Kttm89gw


#800 [ちか]
>>799訂正
私も恭くんもここから×
私も冥さんもここから○
すいません><、

⏰:09/03/27 14:55 📱:P906i 🆔:Kttm89gw


#801 [ちか]
簡単と言えば簡単だけど…そんなのが勝負なのか‥?

俺は解せない顔で神楽さんを見つめた。

「全てを決めるのは恭くんです。
恭くんには‥どれだけ冥さんを愛してるのか試させてもらいます。
もし、恭くんが最上階のこの部屋まで来ることが出来たら、冥さんの勝ち。
出来なかったら私の勝ち。
冥さんが勝ったら私は潔く身を引きます。
ですが、私が勝った時、冥さん。貴方が身を引いてください。」

神楽さんの顔は再び真剣な表情へと変わっていた

⏰:09/03/27 15:00 📱:P906i 🆔:Kttm89gw


#802 [ちか]
「そ‥そんな勝負アリなんですか?!試すなんて‥、俺そんな勝負受けません!!」

俺は立ち上がり、そう声を張り上げた。

神楽さんの真剣な眼差しを見る限り、“試す”には何か危ない匂いがする

これ以上、恭弥に迷惑かけられない……っ

俺は早くここから出て行こうと襖へ歩みを進めた

⏰:09/03/27 22:57 📱:P906i 🆔:Kttm89gw


#803 [ちか]
「いいんですか?」

冷静を保ったままの声に、俺は襖に手をかけた時足を止めた。

「どう言う意味ですか…?」
振り返らずに口を開いた

「冥さんがこの勝負を受けないのなら、私は身を引きません。」

余裕な口調が解せない。

⏰:09/03/27 23:08 📱:P906i 🆔:Kttm89gw


#804 [ちか]
「それがなんだって言うんですか。」

そんなの俺だって同じだ
絶対恭弥を譲ったりなんか‥‥、

「分からないんですか?
身を引かないと言うことは、どんな手段を使っても貴方達を引き離すと言う意味です。
同性同士の貴方達を引き離す事なんて簡単なんですよ?」

その瞬間、心臓が一気に心拍数を上げた。

どうしようもない焦りが俺の胸を掻き鳴らす。

⏰:09/03/27 23:15 📱:P906i 🆔:Kttm89gw


#805 [ちか]
思わず俺は神楽さんの方へと振り返った。

「そ‥んな…こと‥っ」

落ち着け、落ち着け俺。
“引き離す”
その言葉を聞くだけで胸が張り裂けそうになる。
そんな事されたら俺…っ

動揺を隠しきれない俺に、微笑む神楽さん。
全部予想の範囲内ってワケか…。

こんな事なら端から優里の言う通り気をつけておくべきだった…!!!
バカだ…ほんとバカだ俺…。
自分の愚かさに、涙が滲んだ。

⏰:09/03/27 23:27 📱:P906i 🆔:Kttm89gw


#806 [ちか]
「どうしますか?
勝負…受けてくださいます?」

神楽さんの言葉が俺の胸に刺さる。
どっちにしろ、俺に選択肢は無いってワケだ。

「…………受け‥ます。」

俺は小さく呟いた。

恭弥‥‥‥ごめん…。
俺がバカだったから、こんなことに…

でも、俺は恭弥との仲が引き離されることの方が辛いんだ…
苦しくて‥‥‥どうしようもなく恐いんだ‥

⏰:09/03/27 23:32 📱:P906i 🆔:Kttm89gw


#807 [ちか]
俺は恭弥を信じてる。

恭弥がいつだって俺を信じてくれてるように。

ここに着くまでに、どんな罠が用意されてるかは分かんないけど‥‥

でも恭弥なら大丈夫だろ?
恭弥に勝てないモノなんて無いよな…?

信じてる。
信じてるから、どうか無事にここまで来て…――

⏰:09/03/27 23:40 📱:P906i 🆔:Kttm89gw


#808 [ちか]
― 恭弥side.―


僕は今、某ビルの前に立っている。

「ここに居るの?」

睨みをきかせながら松山に問う。

「手紙にはそう書いております…」

そう返事を聞いてから、
一度ため息をついた。

なんで僕がこんなとこに来なきゃ行けないの、全く。
ただでさえ今機嫌が悪いって言うのに。

あぁ、仕方ないから僕がなんでこんなに嫌がりながら此処に来ているか説明してあげる。

⏰:09/03/28 17:43 📱:P906i 🆔:xsG6IXG.


#809 [ちか]
それは一時間とニ十分ほど前のこと‥‥―――


僕は自分の部屋の窓から、じっと入り口を見ていた。

冥を乗せた車がなかなか帰ってこないからだ。

ふと腕時計に目をやると、いつもの帰ってくる時間を一時間も過ぎていた

車は既に学校に着いていると連絡を受けている。

なら、なんで冥が帰ってこない?
下校時間なんてとっくに過ぎている。

⏰:09/03/28 17:50 📱:P906i 🆔:xsG6IXG.


#810 [我輩は匿名である]
>>1-150
>>151-300
>>301-450
>>451-600
>>601-750
>>751-900
>>901-1000

⏰:09/03/28 17:55 📱:P906i 🆔:bLtR/FB2


#811 [ちか]
>>810
└→我輩は匿名さま*

アンカ-ありがとうございます★^^

⏰:09/03/28 18:20 📱:P906i 🆔:xsG6IXG.


#812 [ちか]
>>809

一向に車が帰ってくる気配はない。
一体どうなってるんだ?

ただでさえ、ここ最近は
高橋(英語教師)が冥を居残らすものだから一緒に居られる時間が減ってつまらないのに。

僕は苛立ちをおさめる方法を考えようソファーに座り込んだ。

⏰:09/03/28 18:24 📱:P906i 🆔:xsG6IXG.


#813 [ちか]
少しして、慌ただしくドアをノックする音が聞こえた。

「きょ、恭弥様っ!!!!」

この声は、
「何?松山。」
執事の松山だ。

僕が言うのもなんだけど、松山はくだらない事にもすぐ慌てる癖があるんだ。

いつもはそんな松山に構っているけれど、

「た、た、大変で御座います!!」

今日はそんな気分じゃない。

「悪いけど僕、今凄く機嫌が‥‥、」

悪いんだ、と言おうとしたその時。

⏰:09/03/28 18:34 📱:P906i 🆔:xsG6IXG.


#814 [ちか]
「冥様が……っ!!!!!」

ドア越しで放たれた声に僕はピクリと反応を示した。

冥‥?
冥に何かあったのか‥?!

僕は足早にドアの前まで行き、ノブを捻った。

目の前には手紙らしきものを掴み、焦った顔の松山。

「冥がどうしたの?」

自然と眉間にシワが寄る。

⏰:09/03/28 18:41 📱:P906i 🆔:xsG6IXG.


#815 [ちか]
「中庭にこんな物が錘(オモリ)と一緒に投げ込まれて…、とにかく中をご覧ください!!!」

そう言って松山は手に持っていた手紙を僕に差し出した。

開いてみると、パソコンか何かで打たれた機械的な文字で文章が書かれている。

【クサカ メイを誘拐した。返してほしければ●●ビルに来い。ただし中には1人しか入(イ)れない。】

手紙にはそう記されている。

「何これ、…脅迫状?」

「そのようです…どうしましょう、恭弥様‥っ」

⏰:09/03/28 19:44 📱:P906i 🆔:xsG6IXG.


#816 [ちか]
どうしましょうって…

「行くしかないでしょ。
早く車用意してよ。僕今機嫌悪いんだから待たせないで。」

僕がそう言うと松山は返事をして急いで下へと降りていった。

再び誰も居なくなった部屋で僕はため息をつく。

「全く…誘拐なんて何が狙いなんだよ。身代金の額も書かないなんて馬鹿な連中。」

呆れながら、クローゼットの中のスーツに手を伸ばした。

着替えたあと玄関まで行くと松山が待っていた。
用意された車に乗り込み、ビルに向かって出発する。

そんな経過を経て、僕は今このビルに居るってワケ。
分かった?

⏰:09/03/28 20:02 📱:P906i 🆔:xsG6IXG.


#817 [ちか]
分からないなんて言わないよね?
まぁ、言っても、もう一度説明なんてしないけど
何度も言うけど僕は今機嫌が悪いんだからね。

入り口の前で僕は足を止めた。

「どこまで付いてくる気?」

斜め後ろで心配そうな顔をする松山を振り返って睨む。

「ですが…っ、どんな輩が待っているのか分かりませんし…」

さらに曇っていく松山の顔。

「僕が負けるとでも思ってるの?」

こんな馬鹿な事する連中にこの僕が。

⏰:09/03/28 20:42 📱:P906i 🆔:xsG6IXG.


#818 [ちか]
「い、いえっ…そんなことは思っていませんが…」

口をもごつかせる松山に苛立ちすら感じる。

「なら、お前達はそこで待っててよ。
すぐ片付けてくるから。」

僕はそれだけ言うと、返事も待たず中へと入っていった。

⏰:09/03/28 20:46 📱:P906i 🆔:xsG6IXG.


#819 [ちか]
― 冥side.―

勝負を受けることを余儀無くされ俺は部屋の隅っこに座り込んでいた。

一方の神楽さんは俺から少し離れたところで本を読んでいる。

そんな体勢でどれくらい居ただろうか、襖がゆっくりと開いた。
さっき来た男の人だ。

「神楽様。到着した模様です。」

(本当に来たんだ恭弥…)

徐々に鼓動が速くなる。

神楽さんは男の人の言葉を聞くと、読んでいた本をとじて部屋の真ん中に設置かれたモニターの前に歩いて行った。

⏰:09/03/28 20:58 📱:P906i 🆔:xsG6IXG.


#820 [ちか]
>>819訂正
設置かれた ×
設置された ○
すいません;Д;

⏰:09/03/28 21:29 📱:P906i 🆔:xsG6IXG.


#821 [ちか]
膝を抱え、身を小さくして座りこむ俺に神楽さんは目を向けた。

「冥さんもこちらでモニターを見ませんか?
恭くんが1階のロビーまでいらしてますよ。」

相変わらずの笑顔で神楽さんはそう言うと俺を手招きする。

そして俺も少し悩んだあと、モニターの見える位置までちょこちょこ小走りで駆け寄った。

⏰:09/03/28 21:40 📱:P906i 🆔:xsG6IXG.


#822 [ちか]
モニターに写っているのは、まさしく恭弥だった

一目見るだけでこんなにも気持ちが落ち着くなんて、俺相当恭弥に依存してるな‥

そんな事を考えながら、ふと思った。
見る限り、恭弥以外誰も居ないし物も少なくてガランとしてるけど…
“試す”って何をするんだろう?

俺はモニターから目を離し、神楽さんに聞こうと顔を右に向けた。

「あの、神楽さ…「始まりました。」

「え?」

最後まで言う前に神楽さんは俺の言葉を遮った。
モニターを見つめたまま

それと同時に大きな鈍い音が俺の耳を突き抜けた

⏰:09/03/28 22:48 📱:P906i 🆔:xsG6IXG.


#823 [ちか]
慌ててモニターに目線を戻す。

「…っ!!!?!?!!」

目の前に飛び込んできたのは、大柄な男を蹴り上げる恭弥の姿だった。

「やっぱりこの程度では、恭くんの余裕勝ちですねぇ…。」

神楽さんの悠長な口振りに俺の頭はさらに混乱する。

「こ、こ、これどう言うことですかッッ?!!?!?」

目を丸くさせながら、モニターを指指して神楽さんの着物の袖を掴んだ。

⏰:09/03/28 23:20 📱:P906i 🆔:xsG6IXG.


#824 [ちか]
着物の袖を掴まれて俺に目を向ける神楽さん。

「見て分かりませんか?」

分かるワケないだろ!!!!
と、叫びたい気持ちを我慢して、首を横に大きく振った。

「では説明致しますね。」

神楽さんはそう言って手をモニターの方にやり、説明を始めた。

⏰:09/03/29 18:24 📱:P906i 🆔:T1ep0SO.


#825 [ちか]
「此処は60階建てのビルの最上階です。
今恭くんは此処の1階に居ます。
私が武道家や格闘家の方を雇い、各階に1人ずつ配置させて頂きましたので、恭くんには此処に上がってくるまでに60人程の方と手合わせして頂く事になります。無事に此処まで上がり、冥さんを助ける事が出来れば冥さんの勝ちと言う訳です。御理解頂けたでしょうか?」

テキパキと説明をしてのける神楽さん。

御理解頂けたでしょうかって‥‥

⏰:09/03/29 18:36 📱:P906i 🆔:T1ep0SO.


#826 [ちか]
「理解の前に納得いきませんよ、こんなのっ!!!」

俺は怒鳴り、きつく神楽さんを睨んだ。
そんな俺に顔色一つ変えない神楽さん。

「あら、説明が不十分だったでしょうか…」

「そんな意味で言ったんじゃありません!!!!!」

なんなんだ、この人!!
天然通り越して感覚おかしいんじゃないの?!?!

プロの格闘家を、しかも60人を恭弥1人に戦わせるなんてそんなっ……!!!

⏰:09/03/29 20:02 📱:P906i 🆔:T1ep0SO.


#827 [ちか]
「もしも…っ!!もしも恭弥が取り返しのつかない怪我でもしたらどうするんですか?!!?」

そんな事になったら…
俺のせいで恭弥がそんな目にあったら……っ

俺は力の限り声を張り上げ、神楽さんの袖を握りしめる。

そんな俺にさすがの神楽さんもびっくりしているようだ。
しかし、すぐにその大きな瞳を細めて口元を緩めるとこう呟いた。

「では、冥さんは恭くんを信じていないのですね。」

⏰:09/03/29 20:09 📱:P906i 🆔:T1ep0SO.


#828 [ちか]
落ち着いた口調がどこか冷ややかで、俺は唖然とした。

俺が恭弥を信じてない…?
そんなワケないだろ…っ

抑えようのない怒りが込み上がってくる。

「神楽さんに俺の何が分かるんですか…ッ!!!!」

俺は今までに無いほどにきつく睨み付けてそう言い放った。

それでも俺を見る神楽さんの瞳は冷たいまま。

⏰:09/03/29 21:28 📱:P906i 🆔:T1ep0SO.


#829 [ちか]
「お言葉ですが、冥さん。
貴方は恭くんが怪我をなさったらどうするんだと仰(オッシャ)いましたが、それは恭くんを信じていないからこそ思う事でしょう?」


そう言い返された瞬間、言葉が出なかった。


「私は取り返しのつかないような怪我をする程、恭くんは柔じゃないと思っていますが、違いますか?」

返す言葉が無かった…

納得してしまった自分が悔しくてぎゅっと下唇を噛んだ。

⏰:09/03/29 21:41 📱:P906i 🆔:T1ep0SO.


#830 [ちか]
確かにそうだ…

俺に、俺の心の何処かに恭弥を疑う気持ちがあったから、怪我をしたらどうするんだなんて言葉が出たんだ…
そう思うと自分が腹立たしくて仕方なかった。

黙って俯く俺に、神楽さんは再びモニターへと目を戻した。

そして俯きながら俺は強く願った。
“頑張って”と。

⏰:09/03/29 22:00 📱:P906i 🆔:T1ep0SO.


#831 []
>>700-800

⏰:09/03/30 19:57 📱:SO905iCS 🆔:7m2VKqGw


#832 [ちか]
>>831
└→さま*
アンカありがとうございます
今から更新するので、よかったらまた読んでください♪^^*

⏰:09/03/30 22:37 📱:P906i 🆔:PLDMpyds


#833 [ちか]
>>830
―神楽side.―

やはり冥さんはまだ気づいていないのですね。
‥‥‥私がこの勝負内容を選んだ本当の目的を。

私だって恭くんに、もしもの事が無いよう配慮はしております。
つまり、この内容を選んだのは力でお二人の気持ちを引き離す為じゃないのですよ、冥さん。

私が本当に知りたいのはあくまで恭くんが『本気』なのかどうか。

⏰:09/03/30 22:45 📱:P906i 🆔:PLDMpyds


#834 [ちか]
面倒な事を何よりも嫌がるあの恭くんが、たかが男の子一人のためにご自分の体力を削るとは到底考えられません。

途中で投げ出さず、本当に60人全員を倒して此処までいらしたとしたら、それは冥さんが恭くんにとって、『たかが一人の男の子』でなく、『大切な人』と言う証。

私は恭くんの気持ちの量を計っているのです。

⏰:09/03/30 23:14 📱:P906i 🆔:PLDMpyds


#835 [ちか]
最も恭くんが本気だなんて私は信じていませんが…。

しかし着々と格闘家達を倒し、階を上げていく恭くん。




まさか…そんなはず…

⏰:09/03/30 23:22 📱:P906i 🆔:PLDMpyds


#836 [ちか]
―冥side.―

俯きながらも、時々恭弥が気になってチラチラとモニターに目をやってしまう。

その度に恭弥は相手に圧勝で、階を上げていく。

それに安堵の息を漏らす反面、音の生々しさに少し恐くなった。

階が上がればモニターの画面もすぐに次の階へと変わる。

しかし、神楽さんの笑みも次第に消えていくように見えるのは気のせい…?

⏰:09/03/30 23:39 📱:P906i 🆔:PLDMpyds


#837 [ちか]
―恭弥side.―

‥‥‥‥今、僕の機嫌は最低最悪。

何故かって?

説明するのも面倒だけど…手短に話す。





此処は完全に僕を馬鹿にしているからだ。

⏰:09/03/31 00:15 📱:P906i 🆔:otdL5Ofc


#838 [ちか]
なんなんだ、このふざけたビルは。


誰が仕掛けたのか知らないけどエレベーターはどのボタンを押しても一階ずつしか止まらないし、一度開いたらボタンを押しても中々閉まらないし。

おまけにエレベーターの扉が開けば、格闘馬鹿が飛びかかってくる。


‥‥‥階段?
僕に階段を登れって言うの?


どいつもこいつも、僕を虚仮(コケ)にするなんていい度胸じゃないか。

⏰:09/03/31 00:22 📱:P906i 🆔:otdL5Ofc


#839 [ちか]
僕は冥を取り返しに来ただけ。
こんな奴らの相手をする気なんて微塵も無かったのに。
おかげで予想以上に時間を喰ってしまったじゃないか。


そんな事を思いながら大きくため息を吐(ツ)くと、僕の拳を受けて気を失っている床の奴を軽く足で蹴った。

「手加減したつもりだったんだけど…」

やりすぎたかな?
…まぁ、僕の邪魔をした君が悪い。

そう自分で納得して、またエレベーターに乗り込んだ。

ボタンを押さなくても動き出すエレベーター。
どうなってるだ此処は‥

⏰:09/03/31 00:47 📱:P906i 🆔:otdL5Ofc


#840 [ちか]
>>839訂正
どうなってるだ此処は×
どうなってるんだ此処は○

脱字すいません‥><
自分が不甲斐ないです;;

⏰:09/03/31 00:52 📱:P906i 🆔:otdL5Ofc


#841 [我輩は匿名である]
>>1-40
>>41-80
>>81-120
>>121-160
>>161-200
>>201-240
>>241-280
>>281-320
>>321-360
>>361-400
>>401-440
>>441-480
>>481-520

⏰:09/03/31 01:03 📱:W51SH 🆔:4CiuutXE


#842 [我輩は匿名である]
>>521-560
>>561-600
>>601-640
>>641-680
>>681-720
>>721-760
>>761-800
>>801-840
貴重なスペースをすみませんでしたorz

⏰:09/03/31 01:06 📱:W51SH 🆔:4CiuutXE


#843 [ちか]
>>841-842
└→我輩は匿名さま*

アンカありがとうございます♪おかげで見やすくなりました^^*
良かったら続きも読んでくださいね★

⏰:09/03/31 21:48 📱:P906i 🆔:otdL5Ofc


#844 [ちか]
>>839
―冥side.―

いつの間にかモニターに釘付けだった俺は、隣に居るこの時神楽さんが何を企んでいたかなんて知る由もなかった。

一方の恭弥は襲ってくる相手を楽々倒していき、ついには58階目まで辿り着いた。

あと少しで恭弥が来てくれる。
恭弥に会える。
そう思うと、少し安心出来た。

そんな安心感に包まれていたその時。

⏰:09/03/31 21:57 📱:P906i 🆔:otdL5Ofc


#845 [ちか]
>>844訂正
隣に居るこの時神楽さんが×
隣に居る神楽さんがこの時○
すいません;;

⏰:09/03/31 21:58 📱:P906i 🆔:otdL5Ofc


#846 [ちか]
「このままでは‥‥―――仕方ありませんね。」

急にぼそりと呟いた神楽さん。
どうしたんだろうと顔を右に向けると、目がばっちりあってしまった。

………また嫌な予感が‥


「冥さん。」

「は、はい…?」

にっこりと微笑むその笑顔が今はちょっと怖い。
そんな笑顔にぎこちなく返事をする俺。

神楽さんは俺の返事を聞くとパチンと指を鳴らした。

⏰:09/03/31 22:29 📱:P906i 🆔:otdL5Ofc


#847 [ちか]
指を鳴らすと、すぐに襖が開いた。

「お呼びでしょうか。」

あ、さっきの人‥‥。

いつから居たんだ?

指を鳴らすだけで出てくるなんて漫画みたい‥

そんな事をぼんやり考えているうちに神楽さんはスーツの人と何かコソコソと話をしていた。

⏰:09/03/31 22:43 📱:P906i 🆔:otdL5Ofc


#848 [ちか]
そんな2人の姿を不思議そうに見つめていると、やがて神楽さんの視線が俺へと戻った
企んだ笑顔が俺の方静かに歩み寄ってくる。

「大人しくしていてくださいね。」

「は?!えっ、ちょっと…ッ!!」

神楽さんがそう言うとスーツ姿の人が俺をがっちりと掴んだ。

「それから‥これから先、一言でも喋ったら冥さんの負けですから、ね?」

口元に細い人差し指を当てる神楽さん。


…俺、どーなんの?!!?!

⏰:09/03/31 23:34 📱:P906i 🆔:otdL5Ofc


#849 [ちか]
―恭弥side.―

何処からこいつらは沸いて出てくるの?

と、言いたくなるほどの数。

僕の下で気を失っている大柄の男で何人目だっけ

とにかく鬱陶しい。
早く終わらせて僕は帰りたいんだよ。

「犯人見つけたらただじゃおかないから。」

そんな独り言を呟いてまたエレベーターに乗った。

⏰:09/04/01 13:20 📱:P906i 🆔:5FE0IVk.


#850 [ちか]
エレベーターの中から外を見ると、自分が今けっこうな高さに居ることが分かった。

そろそろ最上階に着いてもいい頃なのに。

そんなことを思っていると、小さくベルの音が鳴って扉が開いた。

その度に訳の分からない奴が飛びかかってくるもんだから、自然と身体が構えてしまう。

が、扉が完全に開いてもかかってくる奴は居なかった。

⏰:09/04/01 13:50 📱:P906i 🆔:5FE0IVk.


#851 [ちか]
警戒しながらエレベーターを降りてみる。

「‥‥‥‥?」

飛びかかってくる奴どころか、見渡す限り物もドアも何一つ無い。
今までに無い不思議な空間。

ゆっくりと進んでいくと、やがてこのビルの造りには似つかわしくない白い襖が見えてきた。

⏰:09/04/01 16:52 📱:P906i 🆔:5FE0IVk.


#852 [ちか]
不審に思いながらもその白い襖を開けてみる。


すると、目に飛び込んできたのは

「冥‥ッ、と神楽…?!」

手足を鎖で縛られた2人の姿だった。

2人の周りには体格が良く黒いスーツにサングラスと言う、いかにも首謀者であるような風貌の4人の男が立っている。

それにしても、
「どうして此処に神楽が?」

状況が飲み込めず、僕はそう呟いて男達と神楽を交互に見た。

⏰:09/04/01 21:37 📱:P906i 🆔:5FE0IVk.


#853 [ちか]
「恭くん…ッ!!助けてください!!!うちにも脅迫文が届いたんです!!それで、駆けつけたら捕まってしまって…っ!!!」

涙目で神楽がそう叫ぶと、傍に居た男が神楽の口を手で覆った。

「喋るな!!!!」

もう一人の男が神楽を睨む。


あれ‥この声どこかで‥――

⏰:09/04/01 22:37 📱:P906i 🆔:5FE0IVk.


#854 [ちか]
「この女が本当に1人で此処まで来たから人質が2人も出来ちまった。アンタが来るまでの暇潰しにしようと思っただけだったのによ。」

そう言って、ため息をつくスーツの男。

やっぱりこの声、喋り方、聞き覚えがある。

仕事関係の奴か?

‥‥‥いや、違う。

僕に恨みのある奴はいくらでも思い付くけど、その中にこんな奴は居ない。


僕はその男を睨み付けるようにまじまじと見つめた。

⏰:09/04/01 23:35 📱:P906i 🆔:5FE0IVk.


#855 [ちか]
男はさらに話し続ける。

「そうだ、どっちか1人は返してやるよ。
けど、もう片方は俺達の好きにさせてもらう。
俺達はなぁ、アンタに恨みがあんだよ。
どっちもお前の大事な奴なんだろ?
目の前で殺ってやる。
せっかくだしアンタにどっちか選ばせてやるよ。」

そう言い終わると、男はゲラゲラと笑った。

他の3人は胸元から銃を取り出すと、2つを冥と神楽それぞれの頭へ、残る1つを僕に向けて構えた。

⏰:09/04/01 23:55 📱:P906i 🆔:5FE0IVk.


#856 [ちか]
どちらか一人を選べなんて悪趣味な奴。

しかし迂闊(ウカツ)に相手を刺激すると両方を喪(ウシナ)いかねない。


どうしようか。

選ぶつもりは無い。
返してもらう人数が1人増えただけ。

しかし相手が銃を持っていると、さすがの僕も簡単には動けない。


僕は下唇をきつく噛みながら、思考を巡らせた。

⏰:09/04/02 00:26 📱:P906i 🆔:Mc5Yvxbs


#857 [ちか]
しかし何か違和感がある


畳が一面に敷かれた和風の造りの広い部屋。

他の階には無い雰囲気。

何かが引っ掛かる。


眉間に皺を寄せ考え込んでいると、静かな部屋に鎖の音が響いた。

⏰:09/04/02 12:14 📱:P906i 🆔:Mc5Yvxbs


#858 [ちか]
鎖‥‥――――?


「さっさと決めな!!」

男がそう言うと、他の2人はさらに冥と神楽のこめかみにきつく銃を当てた。

「恭くん‥‥ッ!!!」

叫ぶ神楽と黙ったままの冥。

擦れて鳴る鎖の音‥――


―――‥‥なんだ。

「そう言うことね。」

⏰:09/04/02 12:33 📱:P906i 🆔:Mc5Yvxbs


#859 [ちか]
―冥side.―

俺は今、なんでか鎖で手足の自由を奪われてる。

俺もなんでこんな事されてんのか分かんない‥

「冥さん。」

右を見れば俺と同じように鎖で縛られた神楽さんが居る。

「な、なんですか‥‥?」

相変わらずにこにこしている神楽さん。
もうこの人ほんと何考えてんのか分かんない…

⏰:09/04/02 13:23 📱:P906i 🆔:Mc5Yvxbs


#860 [ちか]
「もう少しで恭くんが此処に来ます。
もう一度言いますが、絶対喋らないでくださいね。
もし一言でも喋ったら‥‥、」

「負けなんですよね。
分かってます‥。」

俺が言葉を遮ってそう言うと、神楽さんは「そうです」とにっこり微笑んで周りに居る4人の人達とコソコソ話し始めた。

俺は小さくため息をついて襖をじっと見つめた。
恭弥が来てくれるのをただ待って。

⏰:09/04/02 13:46 📱:P906i 🆔:Mc5Yvxbs


#861 [ちか]
暫くして襖に黒いシルエットが映り、ゆっくりと開いた。

恭弥‥‥―――ッ


そこに立っていたのは紛れもなく恭弥だった。


自然と身体が前のめりになって、今すぐその名前を呼びたかったけど、俺のすぐ隣に立っていた男にがっちりと掴まれてどうする事も出来なかった。

⏰:09/04/02 14:01 📱:P906i 🆔:Mc5Yvxbs


#862 [ちか]
恭弥も少し驚いた顔をして俺達を見ていた。

「どうして此処に神楽が?」

と恭弥が呟くと、隣で神楽さんが自分も捕まったんだと叫んだ。

これもこの人の作戦か何かか‥?

ワケが分からなくて俺の頭はさらに混乱する。

⏰:09/04/02 14:12 📱:P906i 🆔:Mc5Yvxbs


#863 [ちか]
傍に立っているスーツの人が胸元から銃を取り出すと俺のこめかみに当てた。

銀色のソレから冷たい感触が伝わってくる。

どっちかを返すだの、
殺すだの‥‥
全然話についていけないんだけど!!

恭弥にどっちか選ばせて勝敗を決めるつもりか‥?!

話が違うじゃん…っ!!

⏰:09/04/02 14:25 📱:P906i 🆔:Mc5Yvxbs


#864 [ちか]
一方の恭弥も黙ったまま


俺を助けに来てくれたんじゃないの…?

まさか、俺と神楽さんのどっちかで迷ってるの…?

そんな…―――

気づいてよ…ッ
全部神楽さんが仕組んでるのに‥‥っ!!!

言いたくても言えないそのもどかしさでさらに胸が苦しくなる。

潤む目で恭弥が見れなくて俺は下を俯いた。

鎖の音が小さく部屋に響く。

⏰:09/04/02 14:34 📱:P906i 🆔:Mc5Yvxbs


#865 [ちか]
「そう言うことね。」

向こう側から小さく恭弥の声が聞こえた。

“そう言うこと”‥?

何が分かったんだ?


咄嗟に顔をあげると、恭弥は笑っていた。

いや、目は完全に獲物見つけた肉食動物の目だけど。

⏰:09/04/02 15:49 📱:P906i 🆔:Mc5Yvxbs


#866 [ちか]
一歩、また一歩と恭弥がこっちに歩いてくる。

「来るなッッ!!!!!それ以上近づいたら2人とも…ッ「いい加減にしてくれませんか?‥‥倉田さん。」

面倒くさそうな口振りで恭弥がそう言うと一瞬、スーツの人達の動きが止まった。

それを見て恭弥はクスリと笑うと神楽さんに視線を落とした。

⏰:09/04/02 16:52 📱:P906i 🆔:Mc5Yvxbs


#867 [ちか]
「全部神楽の仕業ってわけ?なんのつもりなの?こんな事して。」

そう言って恭弥は神楽さんをきつく睨み付ける。

恭弥気づいたのか…?!
でもなんで‥‥‥、

「なッなにを仰っているんですか!!私は捕まって…ッ」

「ソレ。」

神楽さんの動揺で震える声を遮って恭弥が指差したのは俺達を縛っている鎖だった。

⏰:09/04/02 16:59 📱:P906i 🆔:Mc5Yvxbs


#868 [匿名]
>>300-500
>>500-800

⏰:09/04/02 17:39 📱:SH905i 🆔:y.H7GPLA


#869 [ちか]
>>868
└→匿名さま*
アンカーありがとうございます★今から更新するので、続きも楽しんで頂けたら嬉しいです♪´ω`*

⏰:09/04/02 18:10 📱:P906i 🆔:Mc5Yvxbs


#870 [ちか]
>>867
「それくらいの鎖、本気出せば壊すことなんて簡単だよね?
それにこのビルの造りに似合わない畳の部屋。神楽の趣味でしょ?
それから気づくまで時間がかかちゃったけど真ん中の人は神楽の執事(世話係り)‥‥、どう考えても君の仕業だよね?」

すらすらと言ってのける恭弥に神楽さん苦笑いを浮かべた。

「…さすが恭くんですね。降参です。」

神楽さんがそう呟くと同時に構えられていた銃がゆっくりと降ろされる。

⏰:09/04/02 18:28 📱:P906i 🆔:Mc5Yvxbs


#871 [ちか]
「なんでこんな事したの。君が犯人じゃなかったらこのビルごと燃やしてやろうと思ったのに。」

いや、それはまずいんじゃ…?!

と、思わず言いたくなったけど必死にその言葉を飲み込んだ。
そんな俺の心とは反対に神楽さんはしゅんとした表情(カオ)で恭弥を見た。

「すいません‥‥。」

か細い声がぽつりと零れる。

⏰:09/04/02 18:48 📱:P906i 🆔:Mc5Yvxbs


#872 [ちか]
その声を聞いて恭弥はあからさまにため息をつくと、この上ないくらいに鬱陶しそうな表情を浮かべながら話した。

「全くいい迷惑だよ。
なに、遊びのつもり?
それとも僕のこと馬鹿にしてるの?
いい加減にしないと、幼馴染みでも許さないよ。」

恭弥のきつい目付きに俺も少し恐怖感を抱いた。

⏰:09/04/02 19:07 📱:P906i 🆔:Mc5Yvxbs


#873 [ちか]
「……ッ悔しかったんです‥!!」

隣で鉄のがバキバキと音をたてて壊れる音がして、それと同時に震えた声が耳を通り抜けた。

咄嗟に右を向くと、小刻みに肩を震わせている神楽さんが見えた。

まさか、暴れる気?!!?!

俺は無意識に身体を守るような体勢をとっていた。


……が、飛んでくる物は無い。

⏰:09/04/02 19:23 📱:P906i 🆔:Mc5Yvxbs


#874 [ちか]
瞑った目をゆっくり開けると、目に入ったのは大粒の涙を溢(コボ)す神楽さんの姿だった。

恭弥も驚いたように目を丸くしている。

「私はずっと恭くんが好きでした…ッ、子供の頃からずっと…!!!なのにこんな最近ひょっこり現れたような男の子を恭くんは大切だと言って……っ!!!
私や、他の人にも見せた事のない表情(カオ)で微笑んで……っ
悔しかったんです…ッ
恭くんが遠くに行ってしまったような気がして…っ」

そう言ってぽろぽろと涙を流す神楽さんの姿から、恭弥をどれだけ好きだったか伝わってきた。

⏰:09/04/02 19:34 📱:P906i 🆔:Mc5Yvxbs


#875 [ちか]
神楽さんは神楽さんなりに恭弥を好きだったんだよな…

不意に車の中で恭弥と自分の昔話をしていた時の、頬を火照らしていた神楽さんを思い出した。

愛し方(カタチ)は違っても、神楽さんは俺と同じように恭弥を愛してたんだよな。

そう思うと涙を流す神楽さんに罪悪感すら感じた

⏰:09/04/02 19:50 📱:P906i 🆔:Mc5Yvxbs


#876 [ちか]
崩れるようにしゃがみこんだ神楽さんに恭弥はそっと近づいて目線の合う位置まで腰を下ろした。

「神楽、聞いて?
神楽の気持ちは知ってたし本当に嬉しいよ。」

しゃくりあげて泣く神楽さんの髪に優しく触れた

「だけど僕は冥のことが好き。神楽の気持ちには応えられない。」

恭弥がそう呟くと細い肩がさらに揺れた。

⏰:09/04/02 20:04 📱:P906i 🆔:Mc5Yvxbs


#877 [ちか]
「でもね、僕にとっては神楽も大切な人なんだよ。
種類は違うけど大切な人に変わりはない。これからもずっと。
遠くへなんか行かないから、いつでも近くに居るから安心してよ。」

そう言うと恭弥は神楽の大きな瞳に溜まった涙を人差し指で拭った。


まるで神楽さんが恋をしたあの日(トキ)のように。

⏰:09/04/02 20:15 📱:P906i 🆔:Mc5Yvxbs


#878 [ちか]
そのあと、恭弥は神楽さんが泣き止むまでずっと傍で背中を擦っていた。


そんな2人を俺は後ろから見るしかなかった。
ちょっと妬いたけどさ、邪魔するほど俺だって空気読めない奴じゃないし。


暫くして神楽さんは泣き止むと俺に深々と頭を下げて謝ってきた。

⏰:09/04/02 20:24 📱:P906i 🆔:Mc5Yvxbs


#879 [ちか]
「冥さん、本当にすいませんでした…」

「や、頭上げてくださいよ!!もう全然気にしてないですって!!」

改めてこう言われると困るよな。

俺の言葉を聞いてゆっくりと頭をあげると神楽さんは柔らかい笑みを俺に向けた。

「ありがとうございます。
しかし、勝負の結果は私の負けです。
これからは私もお二人のために協力しますっ!」

協力って一体‥(笑)

張りきる神楽さんを流すように俺はヘラヘラと笑った。

⏰:09/04/02 20:35 📱:P906i 🆔:Mc5Yvxbs


#880 [ちか]
玄関まで神楽さんの見送りを受けて、俺と恭弥は松山さんの待つ車に乗り込んだ。


沈黙が続く。


別に気まずいわけじゃない。
ただ、『ありがとう』を言うべきか『ごめん』を言うべきか、どっちを先に言うかでずっと悩んでいるのだ。

⏰:09/04/02 20:50 📱:P906i 🆔:Mc5Yvxbs


#881 [ちか]
悩みに悩んだ結果、ありがとうを先に言おうと決めた俺は恭弥の名前を呼んだ。

「きょッ恭弥っ!!」

やべ、声ちょっと裏返った///

そんなことを気にしている中、一向に恭弥の返事が返っててこない。

チラリと恭弥を横目で見てみる。

「‥‥‥‥あ、」

⏰:09/04/02 21:02 📱:P906i 🆔:Mc5Yvxbs


#882 [ちか]
恭弥はかすかに寝息をたてながら眠っていた。


そりゃそうだよな。

いくら恭弥でも、あんだけ大人数の相手したら疲れるよな。


俺は恭弥を起こさないようにそっと近くに寄った

⏰:09/04/02 21:07 📱:P906i 🆔:Mc5Yvxbs


#883 [ちか]
すぐ近くに、俺を助けに来てくれた大好きな人が居る。


ちょっとでも感謝の気持ちが伝わればいいな‥

そう思って、高鳴る胸をおさえながら顔を恭弥の頬に近づける。

「ありがと‥‥//」

チュ.

小さく呟いて唇を落とした。


その時。

⏰:09/04/02 21:11 📱:P906i 🆔:Mc5Yvxbs


#884 [ちか]
「こんなんじゃ足りない」

「へっ?!!?///」

目線を上に上げると、妖艶な笑みを浮かべた恭弥が居た。

「な‥ッ!!!起きてたのかよ!!////」

「目瞑ってただけだったんだけど。」

クスッと笑う恭弥がちょっと色っぽい。

⏰:09/04/02 21:16 📱:P906i 🆔:Mc5Yvxbs


#885 [ちか]
「ずっズルいってそんなの!!!///」

今さら自分のしたことが恥ずかしくなって赤面した。

「ズルい‥?クスッ
人が寝てるの見計らってキスしてきた冥の方がズルいと思うけど?」

ドン…ッ

急に体重をかけられて押し倒された。

⏰:09/04/02 21:24 📱:P906i 🆔:Mc5Yvxbs


#886 [ちか]
「悪い子にはお仕置きしなきゃ。」

甘く低い声に、
鼓動も速く大きくなっていく。

「やっ…やめ…ッ!!///」

「やだ。」

怪しく微笑むその顔すらやっぱり愛しく思えてしまう。


結局、俺はいつまで経っても恭弥のペースから抜け出せないんだよなぁ…

  ― 第四話 e n d ―

⏰:09/04/02 21:42 📱:P906i 🆔:Mc5Yvxbs


#887 [ちか]
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

第四話 噂の女
>>619-800

第四話ついに完結
しましたっ★><

冥の新たなライバル
神楽はどうでしたか??

なお、第五話はこのスレに
収まりそうにないので、
Uを建てたいと思います

見易さを追及したいので
もし良かったら、
感想・ご意見などよろしくお願いします∩^ω^∩

感想板↓
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4220/

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

⏰:09/04/02 21:48 📱:P906i 🆔:Mc5Yvxbs


#888 [ちか]
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
第四話 噂の女
>>619-887

第四話ついに完結
しましたっ★><
冥の新たなライバル
神楽はどうでしたか??

なお、第五話はこのスレに
収まりそうにないので、
Uを建てたいと思います

見易さを追及したいので
もし良かったら、
感想・ご意見などよろしくお願いします∩^ω^∩

感想板↓
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4220/
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

⏰:09/04/02 21:49 📱:P906i 🆔:Mc5Yvxbs


#889 [ちか]
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

>>887-888アンカーミスです
こっちを使って頂けたら
嬉しいです*´ω`

★まとめ

第一話 漆黒のきみ
>>3-195

第二話 比例する気持ち
>>199-332

第三話 嵐は突然に
>>337-608

第四話 噂の女
>>613-886

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

⏰:09/04/02 21:53 📱:P906i 🆔:Mc5Yvxbs


#890 [ちか]
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
※一応改めてアンカー
貼っておきます><

★まとめ

第一話 漆黒のきみ
>>3-195
第二話 比例する気持ち
>>199-332
第三話 嵐は突然に
>>337-608
第四話 噂の女
>>613-886
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

⏰:09/04/02 22:30 📱:P906i 🆔:Mc5Yvxbs


#891 [我輩は匿名である]
お疲れさまでした

もっとH満載が見たいです

⏰:09/04/02 23:08 📱:W52S 🆔:maM.xugc


#892 [我輩は匿名である]
>>1-50


>>51-100


>>101-200


>>201-250


>>251-300


>>301-350


>>351-400


>>450-500


>>501-550


>>551-600

⏰:09/04/04 08:42 📱:F703i 🆔:tw9py5ZE


#893 [我輩は匿名である]
>>601-650


>>651-700


>>701-750


>>751-800


>>801-850


>>851-900

⏰:09/04/04 08:44 📱:F703i 🆔:tw9py5ZE


#894 [ちか]
>>891
└→我輩は匿名さま*

ありがとうございます♪
そう言うシーンも増やしてみます★

>>892-893
└→我輩は匿名さま*

アンカーありがとうございます★

⏰:09/04/04 10:44 📱:P906i 🆔:bpL8Tp2Y


#895 [ちか]
`


 おまけの話 *


_

⏰:09/04/04 10:46 📱:P906i 🆔:bpL8Tp2Y


#896 [ちか]
神楽さんの事が一件落着した俺を待ち構えていたのは期末テストと言う恐怖だった。

今日はそれの1日前。

「冥、いつまでやってるの?」

俺が一生懸命勉強してるって言うのに、それを邪魔するように後ろから抱き着いてくるコイツは黒羽恭弥こと俺の恋人。

「うるさいなあっ!!
夏休みがかかってんの!!」

夏休みを補習なんかに潰されてたまるかっ!!!!

⏰:09/04/04 10:52 📱:P906i 🆔:bpL8Tp2Y


#897 [ちか]
「だから諦めなって。」

「絶ッッッ対いや!!!」

もう1週間も前からずっとこの状態。
すごくない?
俺が1週間前から勉強してるなんて。

そうやって自画自賛していると、不意に恭弥が耳を甘噛みしてきた。

「あ…ッ//」

不意を突かれた俺は熱っぽい声をあげる。

⏰:09/04/04 10:57 📱:P906i 🆔:bpL8Tp2Y


#898 [ちか]
「意地張ってないで、早くこっち向きなよ。」

いつも思うけど、こんな甘い声どこから出てんの‥//

その甘く低い声が俺の一番の強敵。
俺の一番の弱点。


俺だってホントは恭弥と‥‥―――っ///

⏰:09/04/04 11:02 📱:P906i 🆔:bpL8Tp2Y


#899 [ちか]
って!!!//
だめだめだめッッ!!!//

思わず振り向きそうになった身体を必死に止めて、俺はシャーペンを握りしめた。

「テスト終わるまでは、絶対しないっ!!!//」

そう叫んで絡まる恭弥の手をはらう。
叫んだのは自分に言い聞かせる為でもあった。

⏰:09/04/04 11:09 📱:P906i 🆔:bpL8Tp2Y


#900 [ちか]
顔は見えないけど、不機嫌そうな顔をする恭弥が目に浮かぶ。


……って言うか背中に刺さる視線が痛い。


でも今は気にしちゃダメだ!!
気にしない、気にしない!!


改めて気を落ち着かせるため深呼吸をしようと、息を吸ったその時。

⏰:09/04/04 11:15 📱:P906i 🆔:bpL8Tp2Y


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