浮 き 世 の 諸 事 情 。
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#901 []
 
今あたしを叱ってくれるのは
貴方だけで‥

真剣に向き合ってくれる
その瞳で包んで

「本当に‥世話が焼ける」

「い‥ち助さん」

流れるような細い指で
手首を包み込まれれば
どくどくと生命が鳴いてる

⏰:10/03/18 15:49 📱:D905i 🆔:WpH3kYYs


#902 []
 
生きてる心地がした


「何処へ行こうが
貴方の勝手ですが、ね‥」

深いため息を此方に向けて

そう自由にされてしまうと
どうしたらいいかわからなくてね

何処へも行きたくなくなるんです

⏰:10/03/18 15:49 📱:D905i 🆔:WpH3kYYs


#903 []



「壱助さん‥
迷惑じゃないんですか?」

「何、が」

「あたしの世話とか‥」

もじもじと不安げに
そう呟いて見上げた

⏰:10/03/18 15:52 📱:D905i 🆔:WpH3kYYs


#904 []
 
「そう‥ですねぇ」

ちょいと深刻に考えすぎるのが
貴女の性格

「やっぱり迷惑‥ですよね」

肩をぐったり落として
貴女が落ち込めば
辺りは薄暗くなって渦を巻く

しかし、微笑ましくも思う

⏰:10/03/18 15:55 📱:D905i 🆔:WpH3kYYs


#905 []
 
「私に迷惑をかけるのは
まぁ‥構いませんが、ねぇ」

茶を入れれば湯気がたつ
まだ部屋は冷えて
桜の蕾が桃色に染まる

「ちょいとばかり‥
面倒な方が、扱い甲斐がある」

鼻で軽くあしらえば
馬鹿にされてる事にも気付かず
真っ直ぐな瞳が此方を向く

⏰:10/03/18 15:59 📱:D905i 🆔:WpH3kYYs


#906 []
 
「さて、どう‥しますか」

意地悪気に問えば
少し躊躇って唇を浮つかせ


「此処だ、あたしの居場所」

自らに言い聞かせるように
ぽつり呟いて頷いた

⏰:10/03/18 16:03 📱:D905i 🆔:WpH3kYYs


#907 []
 
それでも離れると言ったなら
‥止めていた、でしょうね

不安に握った拳を
柔らかく解いて立ち上がる


「壱助さん‥何処に?」

「丁重に‥お断りしてきましょう」

本音を言えば‥
私だけの貴女にしたいんですが

⏰:10/03/18 16:06 📱:D905i 🆔:WpH3kYYs


#908 []
 


「次期に私の‥妻になると、ね」


「え‥?壱助さん今何て‥」


「まぁ、まぁ」


桜が咲いたら‥一番に、貴女と

⏰:10/03/18 16:09 📱:D905i 🆔:WpH3kYYs


#909 []
第三一章 【桜咲いて、共に】
>>888-908
*。*。*。*。*。*
急に仲直り(゚o゚)
こういう微妙な展開にしか
持っていけない私orz

大事な所聞き逃しましたが
やっぱり壱助さんの隣が
好きな香夜ちゃん
世話好き確定壱助さん
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4676/

⏰:10/03/18 16:15 📱:D905i 🆔:WpH3kYYs


#910 [笹]
【本編アンカー/1〜30】
>>885
【31〜】
>>888-908
最終更新*3月18日
【番外編アンカー】
>>809
最終更新*3月8日

⏰:10/03/18 16:16 📱:D905i 🆔:WpH3kYYs


#911 []



あの後
幸太郎さんにはしっかりと
気持ちを伝えてきた

とても残念そうに
眉を下げていたけれど
『お幸せに』って言って
諦めてくれた

お幸せにって‥
何か変な気もするけれど

⏰:10/03/20 21:22 📱:D905i 🆔:Z99/cef.


#912 []
 
だってあたしと壱助さんは
恋仲じゃあ‥ないんだし


こんな感情に
気付いちゃいけないんだ
辛いだけ、そうでしょ?

貴方はかなりの色男
それに年だって‥離れてる
って言っても
何歳なのか知らないけどね

⏰:10/03/20 21:23 📱:D905i 🆔:Z99/cef.


#913 []
 
でも友人と言ったら
違う気がするし
お父さんでもないしね
お兄さんでもないかも‥
世話好きな所は
お母さんっぽいけれど、


壱助さんはどうなんだろう
あたしのこと‥
どう思ってるんだろう

⏰:10/03/20 21:23 📱:D905i 🆔:Z99/cef.


#914 []
 
「"所有物"‥ですよ」

「‥え?」

澄み切った空を仰いで
艶容な唇が弧を描いた

って言うか‥
何で心のなかが読めるのよ

「おや、おや」

相変わらず冷静で
その上どこか呑気で
伏せた長い睫が揺れている

⏰:10/03/20 21:24 📱:D905i 🆔:Z99/cef.


#915 []
 
「‥見頃、ですね」

ひらり、桃色の花びらが舞う
くすっと笑った壱助さんの手が
此方に伸びてきた


「何‥何ですか?」

食らうつもりなのかと
思わず肩をびくつかせる

⏰:10/03/20 21:25 📱:D905i 🆔:Z99/cef.


#916 []
 
「なぁに‥食らいやしません、よ」

その美しい手が
あたしの頭を一撫ですると
二本の細い指に摘まれた
桜の花びら

それを日の光にかざし
緩く微笑んだ

「春です、ね」

その姿はとても煌びやかで
見とれてしまったの

⏰:10/03/20 21:26 📱:D905i 🆔:Z99/cef.


#917 []



鮮やかに桜色に染まった街外れ
これは絶景、間違いないよ

揺れる花に人々の賑わい
酒の甘い香りがほんのり漂う

酔っ払いは好まない
だけど花見の時くらいは
心を許してしまうんだ

「ほぉう‥酒豪、ときたか」

⏰:10/03/20 21:26 📱:D905i 🆔:Z99/cef.


#918 []
 
酒飲みを見つめたあたしに
壱助さんの低い声がかかる

「え‥ち、違いますよ!!
あたしお酒得意じゃないし!!」

「それは、それは
‥良い事を聞きました」


細めた目で此方を見つめる
何を企んでいるのやら

⏰:10/03/20 21:27 📱:D905i 🆔:Z99/cef.


#919 []
 
「本日は‥盛大に、いきますぜ」

片手に二本ずつ一升瓶を抱えて
微笑んだ貴方
以外とこの腕は力がある


どこから持ってきたんですかそれ
酒豪は貴方でしょう‥?

⏰:10/03/20 21:27 📱:D905i 🆔:Z99/cef.


#920 []



「あ‥伊代さん!!」

「香夜ちゃんじゃないかぁ!!
久しぶりだねぇ」

相変わらず元気な伊代さん
ここ最近何かと忙しくて
顔出しができてなかった

「伊代さんもお花見ですか?」

「出張だよぉ!!」

⏰:10/03/20 21:27 📱:D905i 🆔:Z99/cef.


#921 []
 
この笑顔が好きだ
くしゃっと笑って
ぽんと肩をたたかれる

「花見にゃ団子だろう?
だからこうして、売りに来たのさ」


なるほどと頷き
目の前に置かれた
色とりどりの団子に目を向ける

⏰:10/03/20 21:28 📱:D905i 🆔:Z99/cef.


#922 []
 
「じゃあ伊代さんっ
お団子くださいなっ」

「はいよぉ!!
そいやぁ‥壱助さんは?」

団子を手際よく皿に乗せ
真っ黒な瞳が此方を見つめる


「"酒のお供が欲しいです、ねぇ"
って‥お使いに来たわけです」

⏰:10/03/20 21:29 📱:D905i 🆔:Z99/cef.


#923 []
 
あの人は本当に動かない
相当な事がないと動かない
そしてあの言葉の威圧感
‥遠まわしに言わなくても

"あの人らしいね"と呟いて
沢山の団子を手渡された

「香夜ちゃん!!
乗せられちゃだめよぉ?」

別れを告げた背中に
一言そう告げられた
‥何の事だろう

⏰:10/03/20 21:29 📱:D905i 🆔:Z99/cef.


#924 []



"主人"の元へ戻れば
桜の木に寄りかかり
立て膝をついてすでに飲酒中

はらはらと舞う花びらを
愛おしそうに見つめて
お猪口を口に運ぶ

何て綺麗なんだろう
その色っぽさに何度嫉妬した事か

⏰:10/03/20 21:31 📱:D905i 🆔:Z99/cef.


#925 []
 
「はい、どーぞ」

山のかかった調達品を
目の前にどさっと差し出せば
一瞬その量に目を見開いた

「‥食いしん坊」

鼻で笑いながら
横目でちらり見つめられ

「な‥別に
あたし一人分じゃないですぅ!!」

⏰:10/03/20 21:31 📱:D905i 🆔:Z99/cef.


#926 []
 
結局いつも通り
意地になって反論してしまう
乗せられるとは
こういうことかな?


隣に腰を下ろせば
ふわり漂う壱助さんの香り
着物の襟から伸びた
首筋が淡く溶けてしまいそう

何だか緊張する
体がじわりと熱を帯びた

⏰:10/03/20 21:32 📱:D905i 🆔:Z99/cef.


#927 []
 
「おや‥何処かで酒を
召してきたんですかい?」

「飲んでないですよっ!」

そう答えれば怪しげに笑い
細い指があたしの頬に触れた


「良い色に染まってます故‥
そうなのかな、とね」

⏰:10/03/20 21:32 📱:D905i 🆔:Z99/cef.


#928 []
 
完璧にからかわれてる‥
そうわかっててもやっぱり駄目で


「んもっ‥馬鹿っ!!」

羞恥に目を潤ませて
その指を払いのければ
一気に顔が熱くなり

⏰:10/03/20 21:33 📱:D905i 🆔:Z99/cef.


#929 []
 
「‥紅い」

楽しそうに笑みを浮かべ
お猪口を此方に差し出した


乗せられる‥
やっぱりこういうことかぁ

⏰:10/03/20 21:34 📱:D905i 🆔:Z99/cef.


#930 []



あっという間に日が暮れて
昼とはまた違う
大人な雰囲気の夜桜

賑わいはさらに増して
陽気に踊り出す人々もちらほら

あんなにあった団子も
いつの間にかあと数個

⏰:10/03/20 21:34 📱:D905i 🆔:Z99/cef.


#931 []
 
「あぁっ
もう‥飲めないれす‥ッヒク」


自分でもわかってた
だんだん酔っていくのを

頭がぼーっとして
何だか楽しくなって
勧められればぐいぐいと

調子に乗らされました

⏰:10/03/20 21:34 📱:D905i 🆔:Z99/cef.


#932 []
 
「まぁ、まぁ
まだ夜は長い‥ですよ」

お猪口いっぱいに
とくとくと酒を注がれる

透き通ったこの液体が
あたしの中をめぐって
気分よくさせてるのか

見た目なんて
水と変わりやしないのに

⏰:10/03/20 21:36 📱:D905i 🆔:Z99/cef.


#933 []
 
「おっとっと」

結局溢れそうなそれを
口元に運んで一気に飲み干す

頭じゃわかってる
頭ん中は至って冷静
だけど体は分離してる

もう空の瓶が
いち、に、さん、し‥
あれ?
四本以上あるのはなぜだ
どこから湧いて出てきたんだ

⏰:10/03/20 21:37 📱:D905i 🆔:Z99/cef.


#934 []
 
それにしても‥

「いちしゅけさんは‥
お酒‥ちゅよいれすねぇ」

今にもふらり倒れそうなあたし

打って変わって
先ほどから全く変化のない貴方
顔色一つ変えやしない
化け物かって思いますよ

⏰:10/03/20 21:37 📱:D905i 🆔:Z99/cef.


#935 []
 
「まぁ‥ね」

「ふぅん‥
そおいえば、いちしゅけさん」

完璧に呂律が回ってない
もうさすがにやめよう


「想い人っていましゅかあ?」

あたしは何を聞いてるんだ

⏰:10/03/20 21:38 📱:D905i 🆔:Z99/cef.


#936 []
 
唯一の生き残りの頭さえ
じわじわと蝕まれ
甘ったるいやつに洗脳されていく

「そうですねぇ‥」

ぐいっと言った喉の辺りが
むず痒くなるほど綺麗で


「います、かね」

⏰:10/03/20 21:38 📱:D905i 🆔:Z99/cef.


#937 []
 
遠くを見つめた壱助さん
その瞳には
一体何が映っているのか
あたしの知り得たことじゃない

だけどこうも知りたくなる
そしてその返事に
胸がぎゅうっと締め付けられた

酔っているからかな
どうも変に愛おしい

⏰:10/03/20 21:39 📱:D905i 🆔:Z99/cef.


#938 []
 
俯き地面を見つめれば
優しく頭を撫でられた

優しくしないでほしい
今は涙腺が弱ってるんです


「叶うかどうかは‥
厳しいところ、ですがね」

そっと見上げれば
困ったように微笑んで

⏰:10/03/20 21:40 📱:D905i 🆔:Z99/cef.


#939 []
 
厳しいところって
人妻にでも恋してるのかな
それとも男性だったり?
こんなにも色男だもん
落ちない相手がみてみたい


「だいじょぶれす、きっと
あたしが‥保証しま‥しゅ」

遂に限界を迎え
ふわり体が宙を浮く

⏰:10/03/20 21:41 📱:D905i 🆔:Z99/cef.


#940 []
 
よりかかった隣の肩は
見た目以上に柔らかく

落ちた花びらが頬をくすぐり


そのまま眠りについた

⏰:10/03/20 21:41 📱:D905i 🆔:Z99/cef.


#941 []


小さな寝息
口元に手をかざせば
やっと確認できるほど

「保証‥ねぇ」

一人酒はやはり
ちょいと物寂しい

愛らしい寝顔を眺めて飲むのも
また一興‥ですかね

⏰:10/03/20 21:42 📱:D905i 🆔:Z99/cef.


#942 []
 
もたれた頭を
抱き寄せるように撫でれば
ぴくりと片手が跳ね
此方の着物をつかんだ

「本人に言われちゃぁ‥
参ったもんだ」

呆れ顔で見つめれば
幸せそうに笑みをこぼした想い人

⏰:10/03/20 21:42 📱:D905i 🆔:Z99/cef.


#943 []
 
「あり‥と」

「‥」

「壱‥けさ‥ありが‥と」

素直な寝言に
抱き締めたくなるほどの
愛おしさを覚える

酒のせいですか、ね
やたらと反応してしまう

⏰:10/03/20 21:43 📱:D905i 🆔:Z99/cef.


#944 []
 
「ずっと‥と‥いっ‥しょ」


頬を伝った滴
人聞きが悪いかも知れませんが
貴女の涙は、美しい


‥叶おうが叶わまいが
関係ないですぜ

⏰:10/03/20 21:43 📱:D905i 🆔:Z99/cef.


#945 []
 
貴女がずっと隣にいりゃあ
文句はない、ですから


「‥承知」

涙を片指で拭い
幼い額に唇をそっと寄せた


春の香り、ふわり

⏰:10/03/20 21:44 📱:D905i 🆔:Z99/cef.


#946 []
第三二章 【桜色、溶けて】
>>911-945
*。*。*。*。*
今日は暖かかったので
桜ももうすぐ開花と言うことで
こんなお話^^*ちょっと長め

2人のじれったい関係
どっちかが素直にならないと
叶いそうもありませぬな←
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4676/

⏰:10/03/20 21:48 📱:D905i 🆔:Z99/cef.


#947 [笹]
 
【本編アンカー/1〜30】
>>885
【31〜】
>>888-908
>>911-945
最終更新*3月20日
【番外編アンカー】
>>809
最終更新*3月8日

⏰:10/03/20 21:49 📱:D905i 🆔:Z99/cef.


#948 []



「‥あれ?此処って」

此処はとある旅館
何故旅館かって?
それは‥

「香夜さん‥置いて行きます、よ」

このお方の気まぐれです

⏰:10/03/22 11:49 📱:D905i 🆔:b7M9uhWk


#949 []



それはつい昨日の事
夜空を眺めながら彼は言った

『明日は晴れ、ですね』って

空が澄み切っていたのか
神様の声が聞こえたのか
ただの勘なのかわからないけど

『では‥出掛けましょう、か』

⏰:10/03/22 11:49 📱:D905i 🆔:b7M9uhWk


#950 []
 
本当に気まぐれよ
晴れていたって
いつもお茶飲んで動かないのに

しかもただの散歩かと思ったら
旅館を予約したとか何とか‥
いつ予約したのよ‥はぁ

あたしは全然構わないけど

⏰:10/03/22 11:50 📱:D905i 🆔:b7M9uhWk


#951 []
 
「立派‥ですね」

こんな豪勢な旅館に泊まる
お金は何処から湧いてでてくるの

本当に‥不思議な人


離れ街にあるこの旅館は
場違いなほど立派で
庭園の木々や花はもちろん
丁寧に手が行き届いてて
入り口には大きな門がある

⏰:10/03/22 11:50 📱:D905i 🆔:b7M9uhWk


#952 []
 
しっかりとした柱や骨董品が
あたしの目を奪う
廊下は埃一つ見当たらない
床に自分が映ってる‥


「ようこそ、いらっしゃいました」

女将さんらしき人が
三つ指をついて頭を下げた

なんだか緊張する‥

⏰:10/03/22 11:51 📱:D905i 🆔:b7M9uhWk


#953 []
 
ぎこちなく頭を下げて
横目で壱助さんを伺えば
手慣れた様子で笑みを浮かべ
綺麗にお辞儀した

指先まで、爪の先まで
美しいのだから
隣にいるのが苦痛です

「さて、と」

色男が顔を上げて呟けば
色を召した仲居さんたちの頬

⏰:10/03/22 11:51 📱:D905i 🆔:b7M9uhWk


#954 []
 
壱助さんがいれば
いつだって春が来る
色んな意味で‥ね

「行きます、よ」

春になってもこの手は
ひやり、あたしの手首を冷ます
だけど捕まれるたび
そこからじわり熱を帯びてしまう

いつまで保つかな‥あたしの心臓

⏰:10/03/22 11:52 📱:D905i 🆔:b7M9uhWk


#955 []



「ひろっ‥!!」

部屋間違えてないですか?
二人部屋にしては
空間を持て余しすぎ‥

目の前に広がる空間は
とても洗練されていて
それでいて上品な‥

置いてあるもの全てが
とても高価に見える

⏰:10/03/22 11:53 📱:D905i 🆔:b7M9uhWk


#956 []
 
この座布団さえ‥
座るのを躊躇ってしまうほど


「ほぉう‥」

興味深そうに
部屋の隅々を見渡し
壁にもたれて外を眺めた
足袋が擦れる音が心地いい

どことなく楽しそうな壱助さん

⏰:10/03/22 11:53 📱:D905i 🆔:b7M9uhWk


#957 []
 
と言うかお花見の日以来
‥ご機嫌な気がする

いつか雷が落ちなきゃいいけど

「壱助さん?
何で急にこんな‥」

「失礼致します。
お茶を‥お持ちしました」

男性の声と共に
襖が丁寧に開けられた

⏰:10/03/22 11:54 📱:D905i 🆔:b7M9uhWk


#958 []
 
そちらに目をやれば
藍の着物を着た男性
此処で働いてる人なのかな‥


「香夜‥香夜だろ?」

あ‥やっぱりそうだ
此処は‥

「倫次‥?」

⏰:10/03/22 11:54 📱:D905i 🆔:b7M9uhWk


#959 []
 
そう声をかければ
ぱぁっと笑顔になった

「やっぱり香夜だ!!」

何も変わりやしない
無邪気なままの笑顔


過去の闇の中の
ほんの一握りの至福の時を
彼はくれたのだ

⏰:10/03/22 11:55 📱:D905i 🆔:b7M9uhWk


#960 []
 
「久しぶりだぁあっ
元気にしてたぁ?」

思わずにじり寄り手を握った
そう、倫次は唯一の幼なじみ

真っ黒な髪と瞳
笑った時にできる皺
何だかほっとする

「もちろん!!‥香夜は?」

⏰:10/03/22 11:55 📱:D905i 🆔:b7M9uhWk


#961 []
 
倫次の視線があたしの後ろへ
‥あの色男へ向いた
そして同様にして
あたしにそのまま聞き返す


どんな顔をしてるのかな壱助さん
相変わらずの仏頂面?

「うん!元気だった
‥えっと、こちらは‥」

⏰:10/03/22 11:56 📱:D905i 🆔:b7M9uhWk


#962 []
 
恐る恐る体を後ろへ向けた

思いのほか彼の表情は柔らかく
口元を釣り上げ目を細めていた


「香夜さんの‥"主人"、です」

「しゅ‥主人?」

⏰:10/03/22 11:56 📱:D905i 🆔:b7M9uhWk


#963 []
 
「あぁああっ!!
こちらは壱助さん!!
あたしの‥あたしの‥えっと」

ほら‥戸惑う
結局あたしたちって何なの?

「友人‥じゃないな
えっと、恩人‥そう!恩人!!」

どうして焦る必要があるのか
どうして無理に恋仲を避けるのか
一番自分がよくわかってる

⏰:10/03/22 11:57 📱:D905i 🆔:b7M9uhWk


#964 []
 
必死の作り笑いを浮かべ
"恩人"に目をやれば
組んだ腕を人差し指で
規則正しく叩いている

この仕草‥いらいらしてます
何故って?
そんなの決まってるでしょう


彼は男が大嫌いだから

⏰:10/03/22 11:57 📱:D905i 🆔:b7M9uhWk


#965 []
 
漂う冷たい空気
明らかに嫌な空気です

「あ‥壱助さん!
此方は幼なじみの倫次です」

"あはは"なんておどけてみて
一生懸命和ませてみても
‥壱助さんの鋭い視線で
打ち壊される

「ほぉう‥幼、なじみ」

⏰:10/03/22 11:58 📱:D905i 🆔:b7M9uhWk


#966 []
 
腕を叩いてた指を顎筋にあてて
倫次を下からなめ回すように
見つめていた

倫次に会えたのは嬉しいけど
‥この重苦しい雰囲気

「また夜落ち着いて時間できたら
‥話そうな、じゃあ」

そう言って深く頭を下げて
襖を閉じた

⏰:10/03/22 11:58 📱:D905i 🆔:b7M9uhWk


#967 []
 

さぁて‥どうなることやら


_

⏰:10/03/22 11:59 📱:D905i 🆔:b7M9uhWk


#968 []
第三三章 【ぼやけて、心/前編】
>>948-967
*。*。*。*。*
1000を目前にして波乱の予感w
新キャラ倫次(りんじ)くん
さてどうなるか(゚_゚)w

お花見以来
るんるん壱助♪だったのに←
久々に壱助さんの
鬼畜が見たい気分です ^p^え
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4676/

⏰:10/03/22 12:05 📱:D905i 🆔:b7M9uhWk


#969 [笹]
 
【本編アンカー/1〜30】
>>885
【31〜】
>>888-908
>>911-945
>>948-967
最終更新*3月22日
【番外編アンカー】
>>809
最終更新*3月8日

⏰:10/03/22 12:05 📱:D905i 🆔:b7M9uhWk


#970 []



何にもやましいことはない
だって倫次は幼なじみ
壱助さんはお‥恩人だし

何にも気にすることはない

「‥」

そうよ‥何も

⏰:10/03/26 16:58 📱:D905i 🆔:1zJ6QS4Y


#971 []
 
「壱助さんって
甘いもの好きでしたっけ?」

「いえ、別に」

倫次が持ってきたお茶を啜らず
用意されていた和菓子を
丁寧に切って口の中へ

ゆっくりそうに見えて
案外食べるの早い

⏰:10/03/26 16:58 📱:D905i 🆔:1zJ6QS4Y


#972 []
あっという間に平らげて
不満げにこちらを見つめてきた


「お茶飲まな‥あぁあああぁっ!」

するり伸びてきた手が
あたしの和菓子をひょいと摘み
あの艶容な唇に触れ
吸い込まれた

⏰:10/03/26 16:59 📱:D905i 🆔:1zJ6QS4Y


#973 []
 
「それ‥それあたしのぉぉおっ」

食べたかった‥
すごく美味しそうだったのに

"犯人"の憎たらしい流し目
む か つ く !!

まだ熱いお茶を
いっきに口に流し込んだ
その熱さに喉が痛んだが
見栄を張った

⏰:10/03/26 16:59 📱:D905i 🆔:1zJ6QS4Y


#974 []
 
流れていくのがわかる
どくどくと内側から痛めつけられ
何だか妙に切なくなった


頬杖をついた横顔
貴方の見つめる先に
何があるのかなんて‥

⏰:10/03/26 17:00 📱:D905i 🆔:1zJ6QS4Y


#975 []



「わぁっすごい!!」

広がる桜並木
舞う花びらが鮮やかな絨毯を作る
その横に流れる川のせせらぎ
澄み切った青空と浮かぶ白い雲

‥春真っ盛りだ

⏰:10/03/26 17:00 📱:D905i 🆔:1zJ6QS4Y


#976 []
 
「あまりはしゃいでいると
‥怪我、しますよ」

あまりにも重苦しい空気に
耐えきれなくなって
散歩に行こうと誘おうとしたら
壱助さんの方からお誘いが

何だか表情も
柔らかくなったみたい

この風景と壱助さんの組み合わせ
‥絶景だ

⏰:10/03/26 17:01 📱:D905i 🆔:1zJ6QS4Y


#977 []
 
それを目に焼き付けるように
そっと目を閉じた


「何を‥していらっしゃる」

「いや‥いい景色だなぁって」

ゆっくり目を開ければ絶景
長い睫にすらっと筋の通った鼻
きめの細かい真っ白な肌
荒れを知らない色っぽい唇

⏰:10/03/26 17:01 📱:D905i 🆔:1zJ6QS4Y


#978 []
 
‥って

「ち‥近いんですけど」

吐息が頬をかすめる
思わず息を潜めてしまうほど
美しすぎて‥
体が熱を帯びていく

「まぁ、まぁ」

まぁまぁって貴方‥

⏰:10/03/26 17:02 📱:D905i 🆔:1zJ6QS4Y


#979 []
 
「さぁ‥早くしないと
日が暮れてちまいます、よ」

そう余裕たっぷりに囁き
あたしの手を取る


もの凄く近いはず
それなのに貴方の背中は
遠く遠く離れて見える

⏰:10/03/26 17:02 📱:D905i 🆔:1zJ6QS4Y


#980 []
 
いつまでもいつまでも
追っていくのだろうか
結局は追いつかずに‥


気付いているのです
ほんとはね、気付いてる

この気持ちが何なのか

⏰:10/03/26 17:02 📱:D905i 🆔:1zJ6QS4Y


#981 []




温泉どっぷり浸かって
いろいろ考えた

‥いろいろ

廊下に浴衣が擦れる音
ぼんやり映る自分の顔
なんて情けないんだ

⏰:10/03/26 17:03 📱:D905i 🆔:1zJ6QS4Y


#982 []
 
考えたって無駄なんだけど
考えてしまう

あぁ‥もう嫌


襖をゆっくり開ければ
浴衣を着た壱助さんの後ろ姿

首に手拭い巻いてるけど
この人は汗をかくのだろうか

⏰:10/03/26 17:03 📱:D905i 🆔:1zJ6QS4Y


#983 []
 
「早いですね」

「まぁ‥男、ですから」

胡座をかいた横には
お猪口とお酒の瓶
‥酒豪

男の一人酒‥
邪魔しちゃ悪いかな?

⏰:10/03/26 17:04 📱:D905i 🆔:1zJ6QS4Y


#984 []
 
じゃあ、そろそろ時間だし‥

「‥香夜さん」

少し甘ったるい声が
立ち去ろうとしたあたしを
呼び止めた


「何処、へ」

「あぁ‥えっと
ちょっと‥外に」

⏰:10/03/26 17:04 📱:D905i 🆔:1zJ6QS4Y


#985 []
 
何となく言葉を濁らせて
倫次のとこへ行くとは
言えなかった

これがいけないのか
‥やましいわけじゃないの

「幼、なじみ」

いつの間にかその声は
耳元で囁いて
風呂上がりの貴方の体は
少しまだ暖かかった

⏰:10/03/26 17:05 📱:D905i 🆔:1zJ6QS4Y


#986 []
 
「壱助さん‥?」

腰を抱かれて
そのまま身を委ねてしまった


「‥倫次、待ってます」

「私の‥
知ったこっちゃ、ないのですが」

知ったこっちゃあってほしい‥

⏰:10/03/26 17:05 📱:D905i 🆔:1zJ6QS4Y


#987 []
 
首にかかる吐息が
少しお酒を漂わせて
酔ってんのかな?

「すぐ、戻りますから」

「それなら‥行かなくても
いいじゃあ、ないですか」

「‥んん」

⏰:10/03/26 17:06 📱:D905i 🆔:1zJ6QS4Y


#988 []
 
口ごもれば‥
さすがに壱助さんも子供じゃない

「‥体が冷えます故
早く、戻ること」

そう言うと
するり腰から腕が溶けた
軽くなった腰を上げ

足早に部屋を出た。

⏰:10/03/26 17:06 📱:D905i 🆔:1zJ6QS4Y


#989 []
 
ねぇ、壱助さん

貴方の手が
引き止めたのは

お酒のせいじゃ
‥ないのでしょうか?


何時だって貴方は
あたしを惑わせて‥

⏰:10/03/26 17:08 📱:D905i 🆔:1zJ6QS4Y


#990 []
第三四章 【ぼやけて、心/後編】
>>970-989
*。*。*。*。*
ここではラスト話です ^p^
壱助さんが
わかりやすく妬いてます w
しかしよくわかってない
香夜ちゃんw(゚_゚)鈍感

第二段に続きます !!
末永くよろしゅう(´・ω・`)
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4676/

⏰:10/03/26 17:15 📱:D905i 🆔:1zJ6QS4Y


#991 []
【本編アンカー/1〜10】
>>1-44   ( 拾われて
>>46-78  ( 救われて
>>80-116  ( 雇われて
>>118-127 ( 誘われて
>>129-144 ( 叱られて
>>147-171 ( 困らせて
>>173-193 ( 触れられて
>>197-226 ( 捨てられて
>>230-257 ( 守られて
>>260-294 ( 奪われて

⏰:10/03/26 17:45 📱:D905i 🆔:1zJ6QS4Y


#992 []
【本編アンカー/11〜20】

>>318-339 ( 魅せられて
>>342-363 ( 訴えて
>>396-420 ( 現れて/前
>>423-445 (  〃 /後
>>472-498 ( 無力さ、覚えて
>>500-535 ( 寂しさ、溢れて
>>559-576 ( 温もり、消えて
>>578-593 ( 嘆いてみても
>>595-611 ( 待ちわびて
>>613-628 ( 迎えに来て

⏰:10/03/26 17:48 📱:D905i 🆔:1zJ6QS4Y


#993 []
【21〜30】
>>631-652 ( 約束、交わして
>>654-674 ( 抱き寄せて
>>676-697 ( 血の涙、滲んで/前
>>703-726 (   〃    /後
>>728-744 ( 与え続けて
>>763-783 ( 春、訪れて
>>810-827 ( 破片、散って
>>831-845 ( 煙に、染めて
>>847-863 ( 甘い、錯覚
>>867-883 ( 歪んで、淡く

⏰:10/03/26 18:01 📱:D905i 🆔:1zJ6QS4Y


#994 []
【31〜34】
>>888-908 ( 桜咲いて、共に
>>911-945 ( 桜色、溶けて
>>948-967 ( ぼやけて、心/前
>>970-989 (   〃   /後

⏰:10/03/26 18:08 📱:D905i 🆔:1zJ6QS4Y


#995 []
【番外編】

>>297-316 ( 後ろ髪、引かれて
>>366-393 ( 微笑んで
>>450-470 ( 呑んで、呑まれて
>>537-557 ( 待ち焦がれて
>>746-759 ( 口付けて、桃色
>>787-806 ( 夢、重なって

⏰:10/03/26 18:15 📱:D905i 🆔:1zJ6QS4Y


#996 []
【零れ話】
ほんとはこの作品
1000で終わらせるつもりでした←

だけど
皆様から沢山のお言葉を頂き
大変励みになりまして
調子に乗って第二段いきますw
これからもよろしくです ^^*

⏰:10/03/26 18:21 📱:D905i 🆔:1zJ6QS4Y


#997 []
最初は
こんな変な小説
読む人なんかいないだろうと
暇つぶしに書いてました←

だけど今では
壱助さんが人気者にwww
まさかです\(^O^)/
笹はとっても幸せです !!

⏰:10/03/26 18:25 📱:D905i 🆔:1zJ6QS4Y


#998 []
 
こんなぐだぐだな作者ですが
放置は絶対しません !!

これから忙しくなるので
マイペース更新ですが(゚_゚)

皆様今後とも
お付き合い願たい !!

⏰:10/03/26 18:27 📱:D905i 🆔:1zJ6QS4Y


#999 []
 
誤字脱字、多々見られましたが
お許しください(´・ω・`)

感想、指摘等はこちらへ
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4676/

⏰:10/03/26 18:28 📱:D905i 🆔:1zJ6QS4Y


#1000 [笹]
 
ではでは
>>991-995
全部制覇したあなた !!

第二段へれっつごー ^p^
bbs1.ryne.jp/r.php/novel-f/11461

⏰:10/03/26 18:29 📱:D905i 🆔:1zJ6QS4Y


#1001 [我輩は匿名である]
このスレッドは 1000 を超えました。
もう書けないので新しいスレッドを建ててください。

⏰:10/03/26 18:29 📱: 🆔:Thread}


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